大人と違う子どもの目の視点と特異性
2003年、秋田大学の研究チームが子どもの視点を考慮した安全な歩行空間について発表をした。大学生6人、小学1年生3人にアイカメラをつけてもらい、大人と子どもの視点にどんな違いがあるか、路上での歩行を調査している。
その結果、大人は道路の前方・奥行に注視し、周辺の建物などをまんべんなく見ているのに対して、子どもは視界の下方を注視し、主に路面を見ていることがわかった。
歩道にあるカーブミラーを障害物とみなした調査でも、大人は自分が歩ける空間を判断するためにミラー周辺に目を配るが、視線が下がっている子どもはカーブミラーの根元付近だけに目がいってしまい、周りの様子を把握することがない。左右の車両や歩行者に気づかずに接触するのは無理からぬことだろう。
2005年に、やはり秋田大学のチームが、小学生10名にカメラを持たせて、好き・嫌いと感じたものを撮影させた。撮影された対象には家屋や店舗、樹木など身近に思えるものが多く、「かっこいい」「面白い」「楽しい」などの好印象を持つものを特に注視するという結果が出ている。
親だけでなく、周囲の大人も見守る
元来、子どもには「中心化」という視覚的に目立つ特定のものにだけ注意を払う傾向がある。建造物であれ、木であれ、興味を引けばそれだけしか目に映らない。視覚と同様に、なにかに注目しているときは聴覚も遮断されるという研究報告もある。
子どもという存在が成長途中という存在であるがゆえに、自身での危機回避は非常に困難だと言わざるを得ない。
その身体の未熟さをカバーするのは、やはり大人の役目だ。年齢が低ければ低いだけ、補助の手が必要になる。親はもちろん、周囲の人間が気に掛けることで子ども達の安全は保障されることだろう。
道を歩く子ども達に少しだけ注意を向けてやる、それで防げる事故はあるはずだ。
(文=編集部)
【参考】東京都福祉保健局「東京都版チャイルドビジョン(幼児視界体験メガネ)」