「俺の言葉は絶対だ!」の台詞も、語気は強いが病理医の意義を物語っているといえる。
「そう! 病理医は、頭のてっぺんから足の指先まで、体のありとあらゆる部分の病気をみる“横断的”な役目をもつ医者であり、精神科を除くすべての臨床科と付き合うことが運命づけられています」
「ですから、対象となる病気はもちろん、“がん”だけではありません。感染症やアレルギー、循環器疾患や遺伝病、皮膚病から婦人科疾患まで、ありとあらゆる病気が目の前に現われるのが日常的です」
岸の性格を敬遠して人材がなかなか居つかない病理診断科で唯一、野村周平さんが演じる臨床検査技師が迅速な手助けをしていたが、実際の現場も人材不足なのだろうか。
「病理医は、治療こそ“しない・できない”けれど、病気の成り立ちについて詳しい集団。ところが、専門医は全国で2000人程度ととても少なく、多くの病理医はとても忙しい毎日を送っています」
第1話を観て、病理医の重要性を知り、堤教授のエピソードを読んで、さらに興味を深めた人は、次回が待ち遠しいに違いない。15分拡大の初回平均視聴率は9.6%(ビデオリサーチ調べ:関東地区)。事前にネット上で呟かれたキャスティングへの不満はクリアされていたと思う。
(文=編集部)
「宮崎智尋の今週の病理診断」
番組サイトでは、宮崎智尋役の武井咲さんがナビゲーターとなって実際の病理診断の組織画像を紹介。よりドラマを愉しむにはオススメのコンテンツだ。
堤寛(つつみ・ゆたか)
藤田保健衛生大学医学部第一病理学教授。慶應義塾大学医学部卒、同大学大学院(病理系)修了。東海大学医学部に21年間在籍し、2001年から現職。「患者さんに顔のみえる病理医」をモットーに、病理の立場から積極的に情報を発信。患者会NPO法人ぴあサポートわかば会とともに、がん患者の自立を支援。趣味はオーボエ演奏、日本病理医フィルハーモニー(JPP)団長。著書に『病理医があかす タチのいいがん』(双葉社)、『病院でもらう病気で死ぬな』(角川新書)、『父たちの大東亜戦争』(幻冬舎ルネッサンス)、『完全病理学各論(全12巻)』(学際企画)など。