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【シリーズ「恐ろしい飲酒習慣」第10回】

極限まで落ちないと気づけない「アルコール依存症」は自力では治せない! 抜本的な治療法は「断酒」だけ!

 このように長期間・大量の飲酒習慣が招くアルコール依存症は、健康を剥奪し、人格を破壊し、家庭を崩壊させ、仕事も社会的信用も財産も喪失させ、悲惨な死に至らせる。それが避けられない末路だ。抜本的な治療法はないのか?

 飯田病院認知症疾患医療センターの小宮山徳太郎センター所長によれば、現在のところ断酒の他に治療の選択肢はない。

 1993年、米国国立アルコール研究所(NIAAA)は、患者の特性に合った治療法を検証するために、Project MATCHというランダム化比較試験(RCT)研究を行った。この研究は、全米9施設の患者1726人を対象に、治療者25人が共通の手順で12週間にわたって12ステップ強化療法を施し、その後1年間の飲酒日数と飲酒量から治療効果を判定した。その結果、12ステップ強化療法を受けた患者は、認知行動療法を受けた患者よりも飲酒日数が少なかった。だが、患者の特性と治療法の有効性は、明確に確認できなかった。

 この研究のように、とくに有効なアルコール依存症の治療法はない。治療は、アルコール専門クリニック、精神病院のアルコール専門病棟のほか、日本ダルク(DARC)などの回復支援施設、AA(アルコホーリクス・アノニマス)日本などの自助グループ、断酒会などが行なっている。

 注意したいのは、精神病院のアルコール専門病棟は、断酒の動機づけが明確なことを入院の条件にしている点だ。まず、開放病棟で2~3カ月の入院期間中に認知行動療法や内観療法を行った後、回復支援施設、断酒会、AAにリレーされる。ただし、断酒の動機づけができず、しかも3カ月以上の長期入院が必要な人を収容する専門病棟はきわめて少ない。

 アルコール依存症の治療によく使われる薬剤は何か? 抗酒剤のシアナマイドとノックビンは、アセトアルデヒドの代謝酵素を阻害し、飲酒時の血中アセトアルデヒド濃度を上昇させるので、飲酒すると苦しくなる生体反応を起こし、アルコールを遠ざける。だが、断酒を決意した人が補助的に使えば効果はあるが、飲酒渇望を抑える効果は低い。

 人格喪失、家庭崩壊、社会的破綻、絶望死……。アルコール依存症の人は、もう後がない極限まで落ちなければ、自分の過ちに気づかない。気づいても自力では、もはや立ち上がれない。

 森岡クリニックの森岡洋院長は、「アルコール依存症についてよく学び、他の人の体験談をよく聞き、飲酒を続けようとする自分の心と闘い、自分の姿をありのまま認めて、断酒を決意する。その勇気だけが回復の第一歩」とアドバイスしている。

 さて、自分は大丈夫か? と感じたなら、「アルコール依存症チェックシート」で依存度をチェックしてみよう。

●一般社団法人日本精神科看護協会:www.jpna.or.jp/kokoro/alcohole_c.html

●アルコール依存症治療ナビ(日本新薬):alcoholic-navi.jp/checksheet/

 さらに、アルコール依存症かどうか不安なら、保健所、アルコール専門クリニックや専門病棟のある精神病院のほか、日本ダルク(DARC)などの回復支援施設、AA(アルコホーリクス・アノニマス)日本、断酒会などの自助グループに問合せてほしい。
(文=編集部)

参考文献:『アルコホーリスク・アノニマス』(AA日本出版局)、『アルコール依存症を知る!』森岡洋(ASK)、飯田病院認知症疾患医療センターHP

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