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【シリーズ「最新の科学捜査で真犯人を追え!」第1回】

テレビドラマ『科捜研の女』『CSI:科学捜査班』でもお馴染みの科学捜査とは?

 ところが、この3人惨殺事件では、状況証拠や証言の収集、鑑識課や科捜研による鑑定分析や検視が懸命に続けられたにも関わらず、被害者3人の人的関係や背後関係がまったく不明で、しかも容疑者の因果関係の割り出しも広域化・複雑化してきた。そのために、警察の鑑識課や警視庁の付属機関である科捜研だけでは、とても手が負えなくなった。

 そこで科学捜査は、次のステップを踏む。登場するのが、警察庁の直属機関の科学警察研究所(科警研)や、警察庁の委託を受けて鑑定を進める法科学鑑定研究所(法科研)などの民間の科学鑑定機関だ。

 この3人惨殺事件のように、科捜研でも鑑定が困難な場合、証拠品の試料は、千葉県柏市にある科警研に送られる。科警研は、最新の法科学の知見に基づいた試料の鑑定・分析・実験をはじめ、鑑定技術の研究・開発、各都道府県警への技術指導や技術者の育成も手がけている。

 科警研が取り扱う法科学の守備範囲はとても広い。大雑把に分ければ、死体・骨・歯・精神などを鑑定する法医学、指紋や薬物、DNAや血液型、銃器や爆弾、音声や筆跡などを鑑定する犯罪鑑識科学、少年非行対策や犯罪予防を研究する犯罪行動科学、交通規制や交通安全の研究などに携わる交通科学の4領域になる。

 国内外を問わず、犯罪の凶悪化、知能化、ハイテク化などが取り沙汰されて久しい。科警研は、国家公安委員会規則によって、紙幣、有価証券などの偽造鑑定を専門に取り組んでいることでも知られている。

 犯罪の手口や動機は、ますます不透明になり、広域化、グローバル化は留まることを知らない。イスラム国(IS)などの国際テロ犯罪への対策も急がれる。一方、指紋やDNA型などの情報データベースによる全国的なネットワーク連携は、まだ完全に実現していない。

 だが、科学捜査の切り札、科捜研や科警研の活躍は目覚ましい。科学捜査は、犯罪という闇に正義の光を投げかけ続ける。真犯人を追いつめる手を決して緩めない。次回からは、最新の捜査手法と鑑定テクニックを詳しく探っていこう。


佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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