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【シリーズ「恐ろしい飲酒習慣」第7回】

酒の飲み過ぎで大脳が10~20%萎縮! 脳の機能障害でうつ病や認知症の原因にも

 長期間にわたる大量飲酒の弊害は、神経系や筋肉系にも容赦なく襲いかかる。

 大量飲酒は、毎日の食事のバランスを崩し、とくにアルコールの代謝に欠かせないビタミンB1、B6、B12などのビタミン・ミネラル欠乏症を招くため、アルコール性末梢神経障害を引き起こす。また、水溶性ビタミンのニコチン酸が欠乏すれば、皮膚炎、下痢のほか、認知症、抑うつ、せん妄、幻覚を伴うペラグラ(ニコチン酸欠乏症)を誘発する。

 アルコール性末梢神経障害に至ると、手足の末梢部は、しびれ、痛み、脱力感、筋萎縮などに苛まれる。ビタミンB1の欠乏で起こるウェルニッケ脳症を発症すれば、意識障害、眼が動かなくなる眼球運動障害、眼球がリズミカルに動く眼振、酔ったように歩く失調性歩行などの重篤な障害が現れる。ウェルニッケ脳症に伴って起きるコルサコフ症候群は、健忘症候群とも言われ、時間や方向感覚を失う見当識障害、新しい体験を忘れる記銘力障害などが現れる。

 また、小脳が萎縮するアルコール性小脳失調症に罹ると歩行が不安定になるため、転倒や転落などによる頭部外傷を起こす。その他、妊娠中に大量のアルコールを飲めば、特異的な顔貌、心臓の奇形、発育障害、知能障害をもった子どもを出産する胎児性アルコール症候群を発症する危険性が強まり、死産率も高い。

 さらに、恐ろしい事実がある。

 長期間・大量の飲酒習慣は、大脳を萎縮させる。飲む人と飲まない人の大脳をMRI(核磁気共鳴画像法)の画像で比較すると、飲む人の大脳は飲まない人に比べて、およそ10~20%も萎縮している。しかも、縮んだ大脳は再生できない。

 大脳の萎縮は、認知症うつ病の発症リスクを高めるだけでなく、骨格系、ホルモン系、生殖系へも多大な弊害をもたらす。長期間・大量の飲酒習慣は、あらゆる生体系を毀損し、臓器や組織に致命的な障害や損傷を与え続ける。QOL(生活の質)やADL(日常生活動作)が著しく阻害されるので、やがて人生そのものの破綻につながっていく。長期間にわたる習慣的な過剰飲酒は、実に恐ろしい!
(文=編集部)

参考:「おもしろサイエンス お酒の科学」(日刊工業新聞)、国立がん研究センターHP、e-ヘルスネットHP(厚労省)、「からだのしくみ辞典」(日本実業出版社)、「アルコールと健康NEWS&REPORTS」(アルコール健康医学協会)、独立行政法人酒類総合研究所HP

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