①痛みがでない程度に日常生活を過ごすことが最も重要だ。腰痛を発症した場合、なるべく動かないように、時には仕事まで休んで寝たきりを選択してしまう人がいるが、これは間違い。最新の研究結果では「Stay Active」が常識で、痛みが多少出ていても、なるべくいつも通りの生活に、できるだけ早く復帰するのが良い。
②病態に対する適切な説明とは、医療従事者から必ず受けないといけないアドバイスだ。病態を正しく教えてもらうことで不安が減り、予後予測を立てることができる。
ぎっくり腰の経験者は想像できるだろうが、あの恐怖は耐え難いものであり、不安がどんどん大きくなってきてしまう。そのことが過度に痛みを避けたり、心理的に不安定になったりして、腰痛に対して間違ったイメージを持ったままになってしまう可能性が高くなってしまう。それが腰痛を複雑化してしまう。よって、ぎっくり腰に対して正しい見解を聞き不安をなくす事はとても大事だ。これは③心理的要因に注意するにつながっていく。
④投薬などでの症状のコントロールもとても重要だ。これは「Stay Active」を実践するために、痛みなどの症状をコントロールすることになる。痛み止めを麻薬のように日常的にしようするのは決しておすすめできないが、急性期において使用するのは日常生活を維持するのにとても大事だ。
そして最後に、⑤数週間後の再確認である。ガイドラインに沿ったマネージメントを実行したのちに、医療機関などで再確認してもらう。
もし数週間後(一般的には4〜6週間後)にまだ痛みが残っていた場合、それは何か深刻な疾患を見逃していたり、心理的な問題があったり、腰痛に対して間違った考え方をしている可能性が高いので、再評価し、問題点をもう一度確認する。
このように、ぎっくり腰に対しては、各国が研究を重ねたガイドラインが存在しており、それを使えば基本的には風邪のように治ってしまう。この機会にぜひ覚えてほしい。
最後に注意してほしい点を述べる。ぎっくり腰になってしまったあとに、適切なマネージメントをすれば腰痛はきちんと治るのだが、腰の筋肉(特に多裂筋と呼ばれるインナーマッスル)は萎縮して自然回復しないことが研究でわかっている。そのため、痛みが取れたあとに再発を防ぐため多裂筋をはじめとする腰の筋肉を鍛えることはとても大事だ。トレーニング方法は、病院の理学療法士に聞けば教えてくれるだろう。
三木貴弘(みき・たかひろ)
理学療法士。日本で理学療法士として勤務した後、豪・Curtin大学に留学。オーストラリアで最新の理学療法を学ぶ。2014年に帰国。現在はクリニック(東京都)に理学療法士として勤務。一般の人に対して、正しい医療知識をわかりやすく伝えるために執筆活動にも力を入れている。