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【連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」第14回】

最悪は死に至ることも! "麻薬成分"フェンシクリジン(PCP)を含む危険ドラッグの恐怖

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日本でもフェンシクリジン(PCP)による死亡例が報告(shutterstock.com)

 最近の危険ドラッグには、各種の麻薬成分が含まれていることが数多く認められるようになった。それに伴い、危険ドラッグ中毒患者の重症化、時には死に至るケースも報告されている。また、常用することで依存症に陥ることも問題視されており、長期間の精神科的治療やケアを要する症例も増加している。

 本年の日本中毒学会総会では、麻薬成分含有ドラッグに関する症例報告、化学分析に関する報告が多かった。その中でフェンシクリジン(PCP)およびその類似体による中毒に関する報告が注目されたので報告する。 

死因は危険ドラッグの直接的影響による心停止

 東京大学大学院医学系研究科法医学の槇野陽介医師は、自宅でタバコの先に粉末状のドラッグを付着させて吸引し、同居人に発見された時には既に死亡していたという、30歳代男性の症例を報告した。

 解剖の結果、致死的外傷はなく、誤嚥による気道閉塞の所見も認められなかった。急性死を示唆する諸臓器のうっ血を認めたが、特に腎臓の尿細管のミオグロビンの沈着を確認したため、横紋筋融解症による急性腎不全を引き起こしたものと考えられた。また、尿と血液より、合成カチノンであるα-PVP、α-PHP、αPNPとともに、フェンシクリジン類似体である3MeO-PCPが検出された。

 死因は危険ドラッグの直接的影響による心停止や呼吸抑制、それに急性腎不全も加わったものと診断された。この症例は、危険ドラッグ中毒患者の重症化、複雑化を象徴したものである。法医学教室による尿、血液の分析が行われたため、危険ドラッグ中毒死と確定診断された。 

 また、国立国際医療研究センター病院救急救命センター救急科の佐藤洋祐医師は、34例(男性26例、女性8例)のフェンシクリジン類似体による急性中毒に関する症例報告を行った。眼振は21例、痙攣は8例に認められ、不穏状態を呈したのは21例であった。22例で入院治療を要し、3例が人工呼吸管理を必要とする重症例も認められた。幸いにも死亡例はなかった。 

日本ではフェンシクリジン(PCP)は麻薬

横山隆(よこやま・たかし)

小笠原記念札幌病院腎臓内科。日本中毒学会認定クリニカルトキシコロジスト、日本腎臓学会および日本透析学会専門医、指導医。
1977年、札幌医科大学卒、青森県立病院、国立西札幌病院、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター助手、札幌徳洲会病院腎臓内科部長、札幌東徳洲会病院腎臓内科・血液浄化センター長などを経て、2014年より札幌中央病院腎臓内科・透析センター長などをへて現職。
専門領域:急性薬物中毒患者の治療特に急性血液浄化療法、透析療法および急性、慢性腎臓病患者の治療。
所属学会:日本中毒学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本内科学会、日本小児科学会、日本アフェレシス学会、日本急性血液浄化学会、国際腎臓学会、米国腎臓学会、欧州透析移植学会など。

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