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【連載第6回 快楽はどこまで許されるのか? セックス依存という病】

田代まさしが仮釈放からわずか1年で盗撮! 犯行を繰り返す「窃視障害」という性依存症の闇

 アメリカ精神医学会が定めた精神疾患の診断基準であり、日本の精神医療の現場でも広く用いられている「DSM-5」には、パラフィリア障害群(パラフィリアとは性嗜好の偏りのこと)の最初に「窃視障害」の項が定められている。その定義は次のとおりだ。

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A. 少なくとも6カ月間にわたり、警戒していない人が裸になっている、衣服を脱いでいる、または性行為を行なっているのを見ることから得られる反復性の強烈な性的興奮が、空想、衝動、または行動に現れる。

B. 同意していない人に対してこれらの性的衝動を実行に移したことがある、またはその性的衝動や空想のために臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
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 今回の田代の盗撮は、裸や服を脱いでいるところを見たのとは異なるが、その性的衝動のもつ意味や、その結果としての社会的立場の失墜、という意味ではまさにこの定義にあてはまる。そして、「DSM-5」によれば、窃視障害の「完全寛解」は、次のような状態になって始めて認められる。

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 管理されていない環境下で少なくとも5年間、同意していない人に対してこれらの衝動を実行に移しておらず、苦痛、または社会的、職業的、または他の領域における機能の障害を引き起こしていない。
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 5年どころか、仮釈放されてわずか1年で今回の事件を引き起こした田代まさし。回復はあまりに遠く、その行為が犯した結果は、極めて重い。

連載「快楽はどこまで許されるのか? セックス依存という病」バックナンバー

里中高志(さとなか・たかし)

精神保健福祉士。フリージャーナリスト。1977年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。大正大学大学院宗教学専攻修了。精神保健福祉ジャーナリストとして『サイゾー』『新潮45』などで執筆。メンタルヘルスと宗教を得意分野とする。著書に精神障害者の就労の現状をルポした『精神障害者枠で働く』(中央法規出版)がある。

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