10年以上前に出版された「誰か死ぬのを手伝って―闘う障害者はなぜ安楽死を選んだのか」(原書房)の主人公であるジャン=マリ・ロランは、10歳から車椅子生活を余儀なくされながらも世界を旅し、起業家となった。病気の進行とともに出現する耐え難い精神的・肉体的苦痛に対し、「自分の運命を自分でコントロールしたい」と、インターネットで募集した医師の手を借りて安楽死を選択した。
この本は安楽死を選択するに至った患者の内面の葛藤が、息苦しいまでに非常に真摯に記述されていた。読後、「安楽死を選択するのも致し方ない」とまで思い込ませるものがある。しかし、実はこの本で最も示唆的なのが訳者のあとがきである。訳者の稲松三千野氏は、ロラン氏の心のどこかに「誰か死ぬのを手伝って」のタイトルとは相反する「生きるのを手伝って」という気持ちがなかったのか、と記している。
欧州12カ国で実施した意識調査では、幇助自殺の合法化に賛成する回答が過半数を占めたという。しかし、合法化を支持することと自らが安楽死を選択するかは大きく違う。あなたが耐え難い苦痛を伴う神経難病や末期がんだった場合、安楽死ツーリズムが可能であるとしたらどうしますか?
(文=編集部)