肝臓の病気というと、ついつい酒好きな人のイメージを抱きがちではないだろうか。実際、肝炎はアルコールの過剰摂取やウイルス感染によって発症することが一般的に知られているが、実は最近、アルコールを飲まない人が罹患する肝炎「NASH(非アルコール性・非ウイルス性肝炎)」が増加しているという。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれる。どこか悪いところがあっても、なかなか自覚症状が出にくい臓器だからだ。そのため、健康診断などで肝機能障害や脂肪肝を指摘されても、そのまま放置して悪化させてしまうケースが多くみられる。
酒をよく飲んでいる人ならば、少しは肝臓を酷使している自覚があるだろうが、アルコールを飲まない人となると、肝臓に悪いことをしている自覚がないため、なおさら放置してしまいがちだ。しかし、もし「NASH」を放置すれば、自覚症状のないまま病状が進行し、肝硬変や肝ガンになることもある要注意な病気なのだ。
予防も治療もまず肥満の改善から
肝炎の前段階として見られるのが "脂肪肝"。肝細胞の30%以上に脂肪が溜まっている状態か、または、脂質の量が肝臓の重さの10%以上を占めている状態を指す。最近では、人間ドックを受診する人のうち、1~2割という高い確率で脂肪肝が見つかっているという。
脂肪肝になるメカニズムは、アルコール性の場合、過度の飲酒によって肝臓の働きが低下し、肝臓に運び込まれてきた脂肪が燃えにくくなることから中性脂肪が増加し、脂肪肝になるというもの。
これに対して、非アルコール性の脂肪肝の場合は、肥満が大きな原因となってくる。肥満の人の多くは、食事から摂取するエネルギー量が多いために、肝臓に脂肪酸が多く運ばれ、結果として脂肪肝になりやすい。脂肪肝そのものは死に至る病ではないが、改善しなければ肝炎や肝硬変に進行するケースもある。こうして引き起こされるのが「NASH」なのだ。
肥満が要因となることから、糖尿病や心疾患などに次ぐ「新しい生活習慣病」として注目されている「NASH」。予防するには、まずは肥満に気をつけること。そして、自覚症状が無いため、定期的な健康診断によるチェックも欠かせない。
米国の調査によれば、肥満度を表す体格指数であるBMI(Body Mass Index) が35以上の場合で25~30%、40以上では70%近くがNASHになるという結果も報告されているので、BMI値も一つの目安になる。また、異常値が出たら放置せず、きちんと精密検査を受けたうえで、肝機能を改善することが大切だ。
もしもすでに「NASH」と診断されているなら、肝硬変や肝ガンに進行させないためにも、きちんと治療を受けて欲しい。予防と同じく治療においても、肥満の解消・減量が改善の重要なファクターとなる。
なお、肥満だけでなく、現代人に多い"夜型の生活"も原因の一つとしてあげられている。というのも、肝臓は睡眠中に脂肪を分解するため、睡眠時間が短いと十分に脂肪を分解できず、肝臓に負担を強いることになってしまうのだ。さらにNASH患者の肝臓は、健康な人に比べて鉄が肝臓に溜まりやすい"鉄過剰"という状態になっていることが多いため、鉄分の摂りすぎにも注意が必要だ。
(文=編集部)