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「片足立ち20秒」できますか?  脳卒中リスクと大きな関係が

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ロコモ予防にも最適な"片足立ち" Ishida jr./PIXTA(ピクスタ)

 これを読んでいる方はちょっと椅子から立ち上がり、目を開けたまま"片足立ち"をしてみて欲しい。もし20秒以上バランスを保つことができなければ、すでに脳血管に小さな異常が起きている可能性がある......。

 そんな研究論文が、アメリカ心臓協会の『Stroke』誌に発表された。「片足立ち」で20秒以上バランスをとるのが難しい人は、臨床的な症状のない健康な人でも、脳内の小血管の損傷や認知機能の低下が起きている恐れがあるという。京都大学付属ゲノム医学センターの田原康玄氏らによる研究で明らかになった。

 今回の調査は、愛媛大学病院抗加齢センターで実施する「抗加齢ドック」に参加した、平均年齢67歳の健康な中高年1387人(女性841名、男性546名)が対象。目を開いたまま左右どちらかの足を上げてもらい、バランスを取っていられる時間(最長60秒)を計測。1人2回行い、良い方のタイムを分析対象にした。

 そして参加者全員の脳の小血管をMRIで検査。片足立ちのタイムとあわせて分析した結果、20秒以上片バランスを続けることができない人は、自覚症状のない脳小血管疾患や、認知機能低下のリスクが高いことが明らかになった。

 脳小血管疾患とは、ラクナ梗塞(細い動脈が詰まることで起こる小さな脳梗塞)や、微少出血などのことだ。今回のテストで片足立ちのバランスを取りにくかったのは、次のような人だったという。

●2つ以上のラクナ梗塞病変があった人の34.5%
●ラクナ梗塞病変が1つあった人の16%
●2つ以上の微小出血があった人の30%
●微小出血が1つあった人の15.3%

脳の健康チェック以外にも有効な片足立ち

 今回の調査では、片足立ちタイムの短さは認知スコアの低さとも相関関係があることが分かった。さらに片足で立つことのむずかしさと加齢には強い関連があることも判明。60歳以上になると、片足立ちの時間が明らかに短くなった。

 これまでも、歩き方や身体能力を脳卒中リスクと結び付ける研究はあった。しかし今回の研究では、片足でバランスをとる能力が脳の健康の重要なテストとなることが判明したのだ。「片足でバランスが取りにくい人は、脳疾患や認知機能低下のリスクが高いので注意が必要」と田原氏は述べている。
 
 ちなみに片足立ちは、ロコモティブシンドローム(運動器症候群・略称ロコモ)対策としても推奨されている。ロコモとは老化とともに筋肉、関節などの運動器に障害が起こり、要介護になるリスクが高い状態のこと。片足立ちをすると両足で立っているときよりも太ももの付け根に3倍近くの負荷がかかるため、左右1分行うだけで、約53分歩いたことと同じ運動になる。

 厚生労働省によれば、75歳以上で20秒以上の片足立ちができる人は男性38.9%、女性21.2%(2006年)。しかし、1分×1日3回の片足立ちを継続した人の骨密度を測定したところ、3カ月で6割以上の人で太ももの付け根の骨密度が上昇し、転倒率も3分の1になったというデータもある。

 片足立ちは、ごく簡単に脳卒中と認知機能低下のリスクを早期に判断する材料になり、筋力やバランス感覚をチェックし、運動器の障害を防ぐための格好のトレーニングになる。高齢者に限らず若い人も、メタボや血圧の高さが気になっている人、運動不足を自覚している人などは、仕事の合間にでも片足で立ってみてはいかがだろうか。
(文=編集部)

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