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【連載第2回 ここまで治る! 放射線治療】

画像診断の精度アップで血管の狭窄や極小がんを早期発見

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脳ドックで発見された左椎骨の動脈瘤

 日本人の現在の4大死亡原因といえば、がん・心臓病・肺炎・脳卒中である。がんについては、PET全身検査・診断がいま盛んに行われている。心臓のCT検査も、いまでは簡単に行なえるようになった。

 これまで狭心症や心筋梗塞などの、いわゆる「虚血性疾患」の確定診断には心臓カテーテル検査が行われてきた。手や足の動脈からカテーテルを挿入し、心臓の血管(冠動脈)に造影剤を注入して血管狭窄の有無・程度などを調べるものだ。しかし、動脈にカテーテルを挿入することで合併症や危険性も伴うことがある。

 そこで近年では、画像診断技術の進歩によって心臓カテーテル検査と同様の情報が得られるようになってきた。320列CTを用いた冠動脈3D‐CTAという検査では、造影剤を用いるが、より安全に冠動脈造影検査が可能である。

 一方、心臓超音波検査は「心エコー」検査と呼ばれ、簡単で診断価値が高い検査法である。心エコーで、心筋梗塞、心臓弁膜症、収縮機能障害型の心不全やさまざまな心筋症、心内膜炎、心外膜炎、心タンポナーデ、心臓にできた腫瘍、そして一部の先天性心疾患の診断をすることができる。腕のいい医師や技師が心エコー検査を行うと、冠動脈の血流も評価できるので、心筋梗塞まで進行していない一部の狭心症の間接的な診断もできる。

脳卒中を防ぐ脳ドックでの精査

 さらに脳卒中など脳の疾患は、脳ドックを受けることで予防できる。脳ドックではMRI(磁気共鳴検査)やMRA(磁気共鳴血管画像検査)を用いるが、脳腫瘍、脳動脈瘤、脳動静脈奇形、脳の血管狭窄など発見されることがある。

 未破裂の脳動脈瘤が発見されたな場合、動脈瘤の大きさにより開頭後ネッククリッピングを行うこともあるが、最近は血管内手術(コイル塞栓術)を安全に行うことが多くなった。また、頸部頸動脈の狭窄も血管内手術(ステント留置術)を行う。さらに脳腫瘍は手術で摘出可能な場合は開頭して腫瘍摘出術を行う。残存腫瘍や脳深部の腫瘍に対してはガンマナイフ(ガンマ線を集中照射する放射線照射装置の一つ)での治療を行う。脳動静脈奇形にもガンマナイフの治療が有効だ。

●4大死亡原因を検査で早期発見、治療につなぐ

 検査精度の向上でがん、心臓病、肺炎、脳卒中の4大死因すべてが予防できる時代になった。病気は小さな芽のうちに摘み取ることが大切だ。

 死因の年次推移を見てみると、悪性新生物(がん)は、昭和50年代半ばで死因の第1位となり、右肩上がりで増え続けている。一方、昭和30年代、40年代の死因第1位だった脳血管障害(脳卒中)は、昭和60年代に第3位となり、平成23年には肺炎に次いで第4位となった。

 これは脳血管障害が減ったわけではなく、脳血管障害の治療が飛躍的に進歩し、死亡率が下がってきているためである。高齢化社会では肺炎が死因の第3位だ。現在は死因1位の国民病といわれるがんを、いかに治療するかが課題だ。がんの治療法に関しては、外科的手術、放射線治療、抗がん剤などを使った化学療法がある。

 がんの治療では、外科的治療を中心に放射線治療や化学療法を組み合わせて行うが、コンピュータ技術の進歩で放射線機器の性能が格段に向上しており、副作用も軽減できるようになった。特にがんの脳転移に関しては、ガンマナイフ治療の有効性が確立されている。


連載「ここまで治る! 放射線治療」バックナンバー

高橋伸明(たかはし・のぶあき)

福岡記念クリニック院長。脳神経外科医。還暦を期にメスを置き、新たにガンマナイフを駆使した治療を精力的に実施。ガンマナイフ治療および放射線治療・検査の第一人者。1973年、鳥取大学医学部卒業後、北野病院、国立循環器病センター(ともに大阪府)を経て、1983年、小文字病院(福岡県)副院長(脳神経外科部長)。福岡記念病院副院長(脳神経外科部長)を経て、同院院長、2009年に同院名誉院長に就任。2014年より現職。

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