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相次ぐクラスターと、後退する介護現場のPCR検査

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深刻な介護施設のクラスター

『陽陽介護』を余儀なくされ

「クラスターの渦中は死んでいて、メールをみるゆとりもなかったです」 
2月、首都圏の高齢者施設に勤務するAさんの職場でクラスターが発生。看護師が倒れ、一番陽性者対応をしている看護師すらワクチンの接種ができなかった。クラスターとなったフロアは通常の半分以下の人員で、利用者対応をした。他の部署などから応援は入ったが、入浴介助は全くできなかった。
それだけでなく症状がない陽性の職員が陽性の利用者を介護する『陽陽介護』を余儀なくされた。

『陽陽介護』は、2020年春に広島の知的障害者入所施設でもあった。そこの職員は施設内だけでなく、入院した職員が入院した利用者を介護していた。私は職員たちの献身に、涙が溢れた。しかし広島と同様の事態が2年後、大切な元同僚の職場でも起きていた。

 クラスターが出たフロアは利用者50人に対し看護師8人、介護職16人。職員は10人感染した。しかしAさんの入社時よりも初任給は下がっていた。コロナによる減収で、新規職員の給与を下げざるを得なかったのだろう。Aさんは家族全員が介護職のため、2年も帰省していない。

 コロナ禍となり3年目の今年。1月末になると息子や大切な介護職の友人たちの職場で次々にクラスターが発生した。相次ぐ報告に、心配で気が狂いそうになった。しかも関西は検査すらすぐになされない、恐ろしい状況だった。

陽性者が出ても職員全体の検査がない

「もういい加減にして!」 
大阪市の有料老人ホームで働くBさんは、「高齢者施設で陽性者対応をしてもらう」という国の方針を休憩時にニュースで聞き、テレビに向かって叫んだ。会社は大企業だが離職率は高く、コロナ禍で人手不足は加速する一途だという。 

「陽性者対応が当たり前になったら心身は限界。介護職のなり手もなくなると思います。私生活も犠牲にし入居者のために仕事をしても、高い給料を貰えるわけでもないのに……」と怒る彼女の職場では、1月末、職員に陽性者がでても全員のPCR検査ができたのは8~9日後だった。さらに彼女は濃厚接触者だったが自宅待機にならず、検査も月に一度の『定期検査』のみしか受けれなかった。

 基礎疾患があり、医師の判断でワクチン接種をしてない彼女は、重症化リスクがあり、真夏でもマスクとフェイスガードで通勤してきた。幸い彼女は陰性だったが、急速な感染拡大で検査結果がわかったのは4日後だったという。
吉村知事がアピールしていた、「介護現場の3日に一度の抗原検査」は現在まだ実施されていないという。しかも4月からは月1回あったPCR検査すら無くなった。

 検査が打ち切られた直後、職員に再び感染者がでたが、妊娠中の職員がいるのに、施設で働く職員全体の検査はなされなかった。感染者の有無に関わらずしていた月一回のPCR検査だけでなく、抗原検査すらない。
「陽性の職員は自分の体調不良時に、自分でPCR検査を受けているようです、私は少数でも陽性者が出たなら、感染は拡大すると思います」とBさんは懸念する。

 陽性者が出ても職員全体の検査をしないのは初めての事態。世間の感染拡大のたび、その皺寄せを一手に引き受けてきた。Bさんの予想通り、ゴールデンウィークを経て、再び感染は拡大している。その皺寄せがBさんや妊娠中の職員を直撃している。

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