炭水化物、カルシウム、マグネシウム、オメガ3、塩分をチェック
『自然治癒力が上がる食事 名医が明かす虫歯からがんまで消えていく仕組』(ユサブル刊)
炭水化物の摂取過多
「まず炭水化物。人間にとっての炭水化物は、車でいうガソリンにたとえることができます。車の場合、余ったガソリンはタンクにそのまま貯蔵できますが、人間の場合、余った炭水化物は脂肪に変えられ、脂肪細胞に蓄えられます。この脂肪細胞が健康に対して働くさまざまな悪さの一つが歯周病です。すなわち使い切れるだけの炭水化物を摂取することが、歯周病予防策の有効な一つということができるのです」
カルシウムの過剰摂取
「カルシウムは、若いうちは体の成長にとても重要な役割を果たすものですが、いったん体の骨格が出来上がってしまうと、もうそれほど必要はなく、むしろ摂りすぎると危険なミネラルとなります。カルシウムは体内に入ると、いったん血液中に入り込みますが、血液は一定濃度を保つようになっているため、余分なカルシウムは別の場所に運ばれ、組織や臓器で石のように固まってしまいます。これは異所性石灰化と呼ばれる現象で、脳細胞で石灰化するとアルツハイマーに、眼の水晶体に入れば白内障を引き起こします。さらに歯で石灰化したものが歯石であり、これが歯周病を招く元凶となるのです」
マグネシウム摂取不足
「カルシウム過剰摂取の危険性についてふれましたが、いざそれを体外に排除しようとしても、カルシウムは自力で出ることができません。そこで有効なのが、カルシウムを一緒に外に出すことができるマグネシウムであり、海藻類やナッツ類に多く含まれています」
オメガ3の不飽和脂肪酸の摂取不足
「亜麻仁油やエゴマ油などに含まれるオメガ3の不飽和脂肪酸には抗炎症作用があり、歯周病予防や治療に有効です。しかし、日本国内において流通している油は、ほとんどがオメガ6で、これらの油は炎症作用が強いため、摂りすぎると体にとって有害なものとなります。ちなみに不飽和脂肪酸は、青魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)にも含まれており、魚介類をよく食べる人は高血圧が少ないという傾向も見られます」
塩分の過剰摂取
「塩分に含まれるナトリウムと、野菜や果物に含まれるカリウムのバランスを意識することも重要です。ナトリウムは細胞の内側に入らない性質があるため、塩分が濃い食べ物を摂るとビタミンやミネラルなどの栄養も細胞に吸収されることなく、体外に出されてしまいます。一方、カリウムは細胞内に入り込める性質があるため、ナトリウムとカリウムをバランスよく摂るといいのはそのためです。一般的に、カリウムとナトリウムの割合は、1:3.8がいいといわれていますが、健康のことを考えたら、1:0.1~1くらいのほうがよいでしょう。特に重症の歯周病患者さんには、塩分をほとんど摂らないことをお願いしています」
以上が歯周病の原因であり、それを踏まえた有効な食事療法ということになる。歯周病にかかる前に、また悪化させる前に、生活を食事面から見直していきたい。
(文=編集部)
小峰一雄(こみね・かずお)
小峰歯科医院理事長(埼玉県比企郡)。1952年生まれ。歯学博士。城西歯科大学(現明海大学歯学部)卒。39年前に開業して間もなく、歯を削るとかえって歯がダメになる事実に直面し、以来「歯を削らない、抜髄しない」歯科医師に転向。現在は、ドックベストセメント療法を広めるセミナーを各地で開催するほか、東南アジアにてボランティア活動を展開。