脂肪融解術でもリスクはある
このように、脂肪吸引術の明確なエビデンスはなく、標準的な手技も確立していない。また、脂肪を凍結して除去する冷却脂肪融解術についても、リスクがあるという報告がされている。
冷却脂肪融解術は、脂肪を凍結する装置(CoolSculpting)を皮下脂肪が気になる部位に当て、皮下脂肪細胞を破壊・排出する痩身術であり、傷跡を残さず非侵襲的に皮下脂肪を減らせる方法だ。
しかし、米マイアミ形成外科のMichael Kelly氏らが自施設のデータを調べたところ、138人のうち1人が施術後に脂肪の塊ができる奇異性脂肪過形成を経験していたとする報告を『Plastic and Reconstructive Surgery』7月号にて発表した。
奇異性脂肪過形成とは、皮下脂肪が蓄積し、脂肪の塊を形成する異常だ。痛みは伴わないが、侵襲的な脂肪吸引術によって取り除かなければならない。
Kelly氏は「脂肪の塊が柔らかくなるまでの数カ月間、外見が損なわれた状態で過ごさなければならない。合併症への侵襲的な治療も欠かせない。複数回の脂肪吸引術を必要とする場合もある」と説明している。
湘南美容クリニックの調査では、脂肪吸引手術を受ける人数は2007年からの10年間で、約5倍にも増えているという。しかし、合併症のリスクや、最悪の場合死に至る可能性があるということを念頭に置いておく必要があることは間違いない。
(文=編集部)