スキンケア製品の防腐剤や保湿剤との関連も判明
また、スキンケア製品の多くに含まれるパラベンなどの防腐剤や保湿剤がR.mucosaの成長を阻害する機序も解明された。このことから、特定のスキンケア製品を使用すると、アトピー性皮膚炎が悪化し、皮膚の微生物叢に基づく治療法の有効性が抑制される恐れがある事実が判明した。
米レノックス・ヒル病院皮膚科医のMichele Green氏は「アトピー性皮膚炎患者に新たな治療を提供する可能性が高い。皮膚の細菌叢を通じてアトピー性皮膚炎の治癒の道を開くかもしれない」と語る。
米国立アレルギー・感染症研究所所長のAnthony Fauci氏は「現在の治療法は症状の管理には有効だが、1日に何回も薬剤を塗布する時間的・心理的な負担が大きく、治療費も高い。今後は、アトピー性皮膚炎の治療選択肢を広げるために、使用頻度が少なく、コストパフォーマンスの高い治療法が必須だ」と強調している。
皮膚常在菌は皮膚表面に1兆個以が棲息!
今回の研究の立役者は「常在菌」だ――。
健康な人の身体に日常的に存在する常在菌は、腸内に100兆個以上、皮膚表面に1兆個以上が棲息。生体を平衡状態を保つ拮抗作用、免疫力や抵抗力を強くする免疫系刺激作用、細菌の発育や増殖を抑制する静菌作用などの働きをしている。
皮膚常在菌は、身体部位、健康状態、加齢によって変動するが、皮膚1平方cmに10万個以上が存在ずる。
「にきび菌」のアクネ菌、皮脂成分のトリグリセリドを脂肪酸とグリセリンに分解する表皮ブドウ球菌のほか、肌がアルカリ性になると増え、炎症やかゆみを起こす黄色ブドウ球菌、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、フケの原因になるマラセチア真菌などがある。2009年の『サイエンス』によれば、およそ205種類もの皮膚常在菌が同定されている。
(文=編集部)