ビリルビンとコレステロールの「混合型結石」
40歳の女性。3年前より脂っこい物を食べた後、ときどき上腹部に痛みを感じていた。夕食後30分ほどで上腹部に差し込むような強烈な痛みがあり、夜間救急外来を受診。鎮痛薬の投与で痛みは軽快した。発熱、黄疸なし。超音波検査で胆嚢内に胆石を3個認めた。後日、腹腔鏡下胆嚢切除術が施行された。
胆嚢内には径1cmの黒色の結石を3個認めた。球形の結石が胆嚢の出口(胆嚢管)に落ち込んで激痛が発生したと考えられる。鎮痛薬投与により痛みが軽快したのは、鎮痛効果が胆嚢管の開通を促したためと考えられた。
胆石の割面では、内部に黄色調のコレステロール成分を認める。表面にビリルビンが沈着した混合型結石である。胆嚢粘膜は発赤・充血しているが、胆嚢壁の肥厚は軽度だった。
胆石症の症状は?
胆石症は、胆石が胆嚢内に収まっているときには、症状があらわれない。胆石が胆嚢内を移動して、胆嚢の出口(胆嚢管)に詰まったり、胆嚢を出て総胆管まで運ばれると強い痛みが生じる。右上腹部を中心とする発作性の激しい痛みが特徴だ。
脂っこい物を食べると、生理的に胆汁分泌が刺激される。というわけで、天ぷらなどを食べると、痛みの発作が誘発される。
胆嚢の出口に詰まるのは小さな「石」が多く、大きく立派な「石」ほど無症状だ。胆嚢の出口やその先の総胆管に石が詰まると、胆汁の流れが悪くなり、ビリルビンが血中へと漏れ出し、皮膚や白目(結膜)が黄色くなる「黄疸」が生じる。細菌感染も生じやすくなり、発熱も起こる。
「胆石症」の発作性の痛みは、「尿管結石」「痛風」とともに「三大激痛」として古くから挙げられているほどの痛みなのだ。
(文=堤寛)