胆石症(画像はモザイク加工のもの)
「胆石症」とは、まるでサイコロやおはじき、あるいは庭の小石のような物体が「胆嚢(たんのう)」の中にできる病気である。宝石のように美しい石から、泥やヘドロのようなものまで、さまざまだ。
こんなものが体に! 驚きの胆嚢の画像を堪能していただきたい。
「胆嚢」とは、肝臓で作られる胆汁をぐっと濃縮する、5cm大の袋状の臓器で、肝臓の右側(右葉)の下にへばりついている。胸を覆う肋骨がなくなり、お腹に移行する位置の右寄りにある。
「胆石」が疑われると、超音波検査で調べることになる。超音波をお腹に当てると、「石」の部位で波が強く跳ね返ってくる。このエコー(反射波)をコンピュータ処理で画像化して診断する。
正常な胆嚢には、胆石はできない。胆石は、胆汁成分が固まって(結晶化して)できる異常な状態だからだ。胆石を持つ胆嚢には、多かれ少なかれ炎症と線維化がある。そのため、「胆石症」と「慢性胆嚢炎」は、ほぼ同義語で使われる。
胆嚢は「胆汁を濃縮する」のが最重要の役目。ほとんどの胆石は胆嚢の中にできる。たまに、胆嚢外の胆管(肝内胆管や総胆管)に「石」ができることもある。
胆汁の色の正体は?
正常な胆汁は、黄褐色から黒褐色をしている。褐色の成分は「ビリルビン(胆汁色素)」。「ビリ=胆汁」「ルビ=ルビーの赤」「ン(イン)=物質」を意味し、つまり「ビリルビン」とは「胆汁中の赤い物質」ということだ。
この「ビリルビン」は、赤血球が持つ赤い酸素運搬タンパク、ヘモグロビン(鉄を含むヘム成分)の分解産物だ。そのままでは水に溶けにくいが、肝臓でグルクロン酸抱合されて、水溶性のビリルビンとなり、胆汁中へと分泌される。
余談だが、ビリルビンは尿にも出る。尿の色は、ビリルビンやその分解産物の色だ。血液検査のとき、赤血球を取り除いた血清はきれいな黄褐色をしている。これも微量に存在するビリルビンの色だ。
胆汁の2つ目の成分は「コレステロール」。太った人の血清中に増えるあの悪名高い脂肪成分である。コレステロールは正常な細胞膜の成分で、ステロイドホルモンの原料となる重要な栄養素だ。
その多くは、肝臓で作られて代謝される。肝臓で作られたコレステロールは、胆汁中へと活発に分泌される。黄色い色調が特徴だ。
コレステロールは、脂肪の仲間なので、水に溶けない。そこで登場するのが、3つ目の胆汁成分である「胆汁酸」。胆汁酸はコレステロールを乳化して、水が主成分である胆汁中で、コレステロールが安定して存在できるようにする。いわば、石けんの役目だ。
さらに言えば、胆汁酸は肝臓でタウリン抱合され、この抱合型胆汁酸が胆汁中で活躍する。ビリルビンが血中に増えると「黄疸(おうだん)」となり、結膜や皮膚が黄染する。そのとき、胆汁酸も同時に血中で増える。「石けん成分」が皮膚を刺激するので、「黄疸」が出るとかゆくなるのだ。
コレステロール結石の原因は?
胆石になる成分は「ビリルビン」と「コレステロール」だ。ビリルビンが結晶化して固まると、褐色が濃縮して真っ黒に。コレステロールの結晶は美しい黄色だ。
聡明な読者は、胆石がどうしてできるのか、もう想像できたかもしれない。
コレステロールが胆嚢内で結晶化するのは、胆汁中に肝臓から過剰なコレステロールが分泌され、胆汁酸の働きを超えることが原因だ。そう、ご想像の通り、コレステロール結石(コレステロールが主成分の黄色い結石)を患う人は、肥満体が多いのだ。
血中と胆汁中のコレステロールは必ずしも並行しないので、コレステロール結石を持つ患者のすべてが血中のコレステロール値が高いとは限らない。
「コレステロール結石」の患者の特徴は「4Fs」と表現される。40代(forty)、肥満(fatty)、多産(fertile)の女性(female)。なぜか胆嚢の病気は、胆嚢がんを含めて女性に多い。
次に典型的な「コレステロール結石」の画像を紹介しよう。