「警察」「医者」「家族」の連携効果
事実、2017年1~9月までの間に自主返納した75歳以上のドライバーは18万4897人(認知症機能検査を受けていない人も含む)を数え、その時点で既に年間最多の2016年実績を超えていた。もし「認知症と判断」された場合、公安委員会が「免許取り消し(停止)」処分を行なう。
一方、認知症の本人たちでつくられた日本認知症ワーキンググループ(JDWG)のように、医師の診断で一律に停止処分になる現行制度は「認知症の正しい理解を社会的に求めている時代の流れに逆行するもの」だとする意見もある。
また、日本医師会は昨春、高齢者の運転免許更新時に(認知症の専門医ではない)一般医師が診断書を作成する際の手引きを公表。書き方の具体例を示し、運転をやめた人への心のケアなどについても「かかりつけ医が果たす役割」を盛り込んだ。
ちなみに「認知症に非ず」と診断した高齢者が、のちに事故を起こして認知症と判明した場合、医師の刑事責任が問われる例は通常ない。
しかし、前述の心のケアに加え、「代替えの交通手段や生きがいを一緒に考える大切さ」や、当事者/その家族/周囲の人間との協議、その信頼関係の必要性を手引きは謳っている。
警視庁は2017年秋、地域や道路を限定した高齢ドライバー用の「条件付免許」の導入に向けた分科会の発足を発表。同時に、自動ブレーキや踏み間違え防止機能などを備えた「安全サポート車」についても検討を進める(2018年度中に方向性を取りまとめる)。
現在あるいは近い将来、近親者が「高齢ドライバー」と呼ばれる域に入るという方々は、どうか「家族の一言」の大切さと伝え方を肝に命じよう。始業式の朝に起きた群馬県前橋市での惨劇は、痛ましい傷痕と同時に多くの教訓を残した事故と言えるだろう。
(文=編集部)