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【シリーズ「AIと医療イノベーション」第22回】

遠隔診療の解禁で「スマートスピーカー」と「病気診断支援システム」のコラボが可能に!

スマートスピーカーと病気診断支援システムのコラボレーション

 少し長い前置きになった。「音声AIのスマートスピーカーを活用する音声分析サービス」と「病気診断支援システム」のコラボレーションが実現したらどうだろう? スマートスピーカーは、無線通信接続機能と音声再生のアシスタント機能を合わせ持つ。つまり、Wi-Fi、Bluetoothや他の規格を使用すれば、医療分野でも活用できる。

 たとえば、日立システムズは、声帯の変化(不随意反応)を分析し、スマホの音声データから心の状態を「見える化」する未病音声分析技術のMIMOSYS(ミモシス)を利用する「音声こころ分析サービス」を開発した。大脳辺縁系は、声帯と直接つながっているので、自分ではコントロールできない声帯の変化を分析すれば、心の状態を「見える化」できることから、病気の早期予防や治療に寄与できる。

 システムの流れはこうなる――。患者がふとつぶやいた「喉が痛い」「頭がふらふらする」「お腹がゆるい」などのリアルな音声データをスマートスピーカーが読み取り、記録する→音声データをクラウドに蓄積した膨大なデータと突き合わせる→「音声こころ分析サービス」が音声データを分析する→患者別の音声データの変化を蓄積する→AIが音声データの変化(強弱、高低、ペース、リフレイン、音色)や推移を推論し、診断する→スマートスピーカーが音声データに基づいた最適な診療方針をアウトプットし、インフォームド・コンセントも行う→最適な予防処置や治療がスタートする。

 このような夢のような診療システムが実現するだろうか? 日経CNBCの報道によれば、Amazonは秘密のヘルスケア技術チームを設置し、電子カルテ、バーチャル往診、「Amazon Echo」などのデバイス向け健康関連アプリケーションの立ち上げに取り組んでいる。

 これこそ、人間の言語コミュニケーションを超えたナラティブ(語り口やニュアンスを活かした)インターフェース! 音声AIのスマートスピーカーがめざす究極のスタイルかもしれない。

 このような「夢のような夢でない夢」がかなえば、不治の病の克服も、決して夢でなくなる。AIの見つめる未来。それは、人類のイマジネーションを遥かに凌駕し、超越しているのだろうか? 今、そこにある未来。人に寄り添い、気遣い、気づかせる。人類とAIのミッションは変わらない。
(文=佐藤博)

佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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