胃がんの発症リスクのはどちらが大きいのか?
一方、米スタテン・アイランド大学病院のSherif Andrawes氏は「胃がんリスクのわずかな増大を理由にPPIの使用を中止する必要はない」と指摘。「PPIによる治療をしないことによる消化管の他の部位での出血やがん発症のリスクと比べれば、PPIの副作用によるリスクの方が小さく、PPIが必要不可欠な場合もある。例えば、バレット食道の患者の食道がん予防には胃酸を抑制するPPIが有効だ」と説明している。
ただし、同氏らも胃酸の逆流がみられるだけの患者に対してはPPIを処方する前に生活習慣の是正や食事の改善を促す努力をしていると話している。
日本人のピロリ菌感染者の数は日本人の半数にあたる約6000万人とも言われている。
除菌療法が保険適用となるのは、ピロリ感染胃炎、胃潰瘍または十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃がんに対する内視鏡的治療後などだ。
ピロリ菌除去の薬として、あるいはその後の副作用の緩和のために使われるPPIが胃がんのリスクを高めるというなんとも皮肉な研究結果だ。
(文=編集部)