<血管健康>も自己認識から
そんな追跡調査の結果、5年間の実施期間中に194名の男女が認知症を発症し、うち47名が「血管性認知症」を患い、134名が「アルツハイマー病」に見舞われていた。
さらに、各自の日ごとのSBP値(収縮期血圧)を「最も大きい」層から「最も小さい」層まで4段階に区分けしたところ、両極比では全体的な認知症リスクにおいて下記のような倍率が読み取れた。
「最も大きい」:「最も小さい」=①認知症リスクが2.27倍、②血管性認知症リスクが2.79倍、③アルツハイマー病リスクが2.22倍。いずれにおいても2倍強を示した……。
最も注目すべきは、日ごとの血圧値の変動幅が大きい人の場合、高血圧患者のみに限らず「正常血圧の人」でも、認知症のリスク上昇が確認された点である。
ただし、今回はあくまでも観察研究の域にあるため、小原氏らも「血圧の変動幅が大きい=それが原因で認知症を発症することが示されたわけではない」と注釈を添えている。
「各人の血圧値は、測定時の体調や使用薬剤による影響を受けやすいもの。あるいは降圧薬の飲み忘れなどで変動が生じる場合もあるし、(家庭内測定による)研究には複数の限界がある点も否めない」
これは、小原氏らの報告を論評した米国人のCostantino Ladecola氏(ウェイル・コーネル医科大学)の見解だ。
それでも「血圧の変動幅と認知症リスクとの関連性を明確に示唆した」点を評価している同氏は、「その変動幅を小さくする対策を講じれば、脳の血管の健康を維持できるかもしれない」と成果の意義も述べている。
そうした対策を講じるタイミングについても「高齢期を迎えてからではなく、認知機能の低下が始まる中年期から手を打つのが望ましいだろう」としている。
対策研究の今後の進化が待たれるが、まずは貴方自身の血圧知識を深めることが何よりも肝要だろう。家庭用血圧測定器の入手検討もリスク防衛の一歩である。
(文=編集部)