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【シリーズ「クスリのリスク」 第1回】

本当に「キンカン」は、「虫刺され」にも「肩こり・腰痛」にも効果のある<万能薬>なのか?

なぜ何度も塗らなくてはいけないのか?

 アンモニア水がなぜ虫刺されに効くと言われているのか? これには諸説あり「アンモニアには毒液中の酸の中和や蛋白室を分解する働きがある」、あるいは「アンモニアによる局所刺激で痒みなどの伝達を抑制する」などといわれています。

 今の若い人は聞いたことがないと思いますが、昔はハチに刺されたら消毒と抗炎症のために「おしっこ」をかけると良いという、信じがたい都市伝説がありました。

 しかし、抽出されたばかりの尿の中にはアンモニアはほぼ含まれておらず、さらに言えば、アンモニアは皮膚に吸収されにくい。仮にハチの毒素に効果があったとしても、毒針によって注入された毒素まで到達しにくいため、細菌感染のリスクを冒してまで行う利点はまったくありません。

 虫刺されの効能がある医療用アンモニア水(原液を5~10倍に希釈)の注意書きには、「刺激作用を有するので、長期又は同一部位に反復しないこと」と書かれています。

 しかし、キンカンには……。あのフレーズをもう一度、思い出してください。「キンカン塗って、また塗って」ですね。

 医療用のものには「反復しないこと」と書かれているにもかかわらず、キンカンのホームページには「乾かしては塗り、乾かしては塗りを1日に5~6回繰り返して下さい」と書かれています。医療用とキンカンとは、まったく逆のことを言っているわけです。

 キンカン側の見解としては「溶剤にアルコールを使用し、気化しやすい設計となっているため、アンモニアが皮膚上に留まる時間が短くなっており、通常の使用において、接触性皮膚炎が起こる可能性は低くなっている」とのことです。

 「可能性が低い」ということは、「0ではない」ということなので、皮膚が敏感な人やむやみやたらにつけまくるという人は、注意したほうがいいでしょう。

昔は「火傷・神経痛・リウマチ・しもやけ、皮膚炎」にも効く万能薬だった?

 肌に刺激のあるものばかりが配合されている第2類医薬品のキンカン――。「昔からあるものだから安心」という先入観は捨てて、塗り過ぎている人は一度考えてみて下さい。「キンカン塗って、また塗って」……、だとしても、何度も何度も塗り続けますか?

 雑学ですが、かつてキンカンには、現在、記されている効能のほかに、「火傷・神経痛・リウマチ・しもやけ、皮膚炎(水虫・いんきん・あせもなど)・切り傷」というものがありました。昔は何にでも効く万能薬という触れ込みだったようですが、効能の再評価を行なって現在の記述に変わったようです。

 よくよく考えてみると、刺激性のある成分ばかり入っている薬品を、水虫・いんきん・あせも・切り傷なんかに塗ればどうなるか、一目瞭然ですね?

水谷光佑(みずたに・こうすけ)
日本で登録販売者としてOTC医薬品販売に従事。その後、視点を人から動物へ移し、動物医療の勉強のためオーストラリアに留学。現在も、新米登録販売者の相談をオンラインで受け付け、人材育成に従事している。

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