日本医学会が「商業主義」の研究を批判(depositphotos.com)
日本人類遺伝学会、日本産科婦人科学会、日本遺伝カウンセリング学会、日本家族性腫瘍学会など9学会・団体が、将来生まれる子どもの「遺伝病」の発症確率を調べる民間企業の遺伝子検査サービスは商業主義だけに基づく取り組みで承認できないと強い懸念を示し、遺伝子検査に関する日本医学会のガイドラインに即した対応を求める緊急声明を発した(「読売新聞」2017年7月5日)。
批判の矢面に立たされたのは、DTC(Direct to Consumer:消費者向け遺伝子検査サービス)大手のジェネシスヘルスケア社(東京)だ。同社は米国の解析技術を準用し、男女カップルの唾液のDNA解析を行い、「生まれる子どもに関する1050種類の遺伝病の発症率を予測する」としている。現在、日本人のDNAを検証する臨床試験をスタートし、来年中に一般向けのサービスを立ち上げる予定だ。(参考:ジェネシスヘルスケア社)
恣意的な「生命の選別」につながる恐れあり
先の9学会・団体の緊急声明によれば、遺伝病の発症率を調べるDNA検査は、妊娠や出産の判断に悪影響を及ぼす可能性が極めて強く、恣意的な「生命の選別」や安直な遺伝子スクリーニング(ふるい分け)の容認につながる恐れがあると指摘。
さらに、検査を受けた男女カップルが発症する遺伝病を知るリスクもあることから、遺伝医療のエキスパートである「遺伝カウンセラー」が事前に十分な説明を行うよう要請するとともに、遺伝カウンセラーが介入できない遺伝子検査を実行しないように強く要望。「倫理的・社会的な問題が十分に検討されていない遺伝子検査は、国民に過度な不安を与え、社会的な混乱を招くリスクがある」と結論づけ、警鐘を発している。
この緊急声明に対してジェネシスヘルスケア社の広報担当は「見ておらず、コメントできない」と述べている。