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【連載「頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた」第17回】

気をつけたい乳児・幼児・小児の「2次性頭痛」とは? 痛み止め薬を飲む前に専門医による診察を!

注意しなければいけない子供の2次性頭痛で

 では、子供の2次性頭痛で注意しなければいけない①〜④の2次性頭痛を順番に説明していきましょう。

①感染症(髄膜炎、脳炎、敗血症など)による頭痛

 最も多い頭痛起こす原因です。読者のみなさんも経験があると思いますが、高熱があるだけで頭痛起こします。ですから初めに子供に発熱があるかどうか、確かめてください。

 また地域や職場、保育園などの生活環境の周囲で、インフルエンザなどの感染症が流行っていないかどうかも重要な判断材料になります。今の季節でしたら、プールなどで感染しやすいプール熱(咽頭炎=のどの痛み、結膜炎=目の充血、39℃前後の発熱が、数日から1週間続く症状続くとされ、アデノウィルスが原因と考えられる)などにも注意が必要です。

 感染症が進行して、髄膜炎、脳炎を起こす場合もあります。この場合は、頭痛が治まることは少ないですから、発熱と頭痛が改善しないときは、すぐに専門医療機関で検査を受けてください。

②頭頸部外傷・傷害(頭部の打撲、むち打症など)による頭痛

 外傷は親の知らないところで受傷している可能性があります。たとえば、子供が公園に行ったとき、実は鉄棒から転落していることも……。「頭が痛い」と子供が言ったときに、「いつから?」「どのようなときに?」「どの程度?」といったことを聞いてあげてください。

 また乳児や幼児の場合は、自分で状況をうまく説明できませんから、以前に本誌でも紹介した「割り箸事件」(参考:かつて社会問題になった「割り箸事件」と同様の患者が救急搬入!もし脳に折れた箸が残っていたら!?)のようにならないためにも、受傷したときの状況、観察をメモなどにとっておき、医師に説明できるようにしておくことも大事です。

③非血管性頭蓋内疾患(てんかん、低髄圧症、脳腫瘍など)による頭痛

 小児の熱性けいれん、てんかんは、よく見られる疾患です。全人口の0.5〜1%前後の有病率ですから、我々神経を専門にしている小児科や内科では、たくさん患者のいる病気です。

 てんかんそのものは、頭痛を来すことは少ないのですが、てんかん発作後に頭痛の残る場合があります。また稀ですが、脳腫瘍を起こしている場合もあります。小児に多い脳腫瘍は、神経膠腫、胚細胞腫瘍、髄芽腫、頭蓋咽頭腫などです。いずれにしても、脳MRIなどによる画像検査が必要です。

④眼・耳・鼻・歯・口などの障害による頭痛や顔面痛

 子供は正確に自分の痛いところを言うことができません。よって、眼・耳・鼻・歯・口などの異常がある場合にも「頭が痛い」と言うことがよくあります。

 この中に含まれる病気は、たくさんの種類がありますが、子供に比較的多い頭痛は、歯痛、口内炎、中耳炎、副鼻腔炎などが上げられます。また、眼の病気はメガネの矯正や屈折がうまく合わずに頭痛を来すこともよくあります。

* * *

 今回は、子供の頭痛として安易に痛み止め(NSAIDS)を飲む前に、忘れてはいけない「2次性頭痛」についてお話ししました。これら2次性の頭痛は、病気によって治療が異なるので、子供の様子を見て「おかしいな」と思ったら医療機関を受診してください。

連載「頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた」バックナンバー

西郷和真(さいごう・かずまさ)

近畿大学病院遺伝子診療部・脳神経内科 臨床教授、近畿大学総合理工学研究科遺伝カウンセラー養成課程 教授。1992年近畿大学医学部卒業。近畿大学病院、国立呉病院(現国立呉医療センター)、国立精神神経センター神経研究所、米国ユタ大学博士研究員(臨床遺伝学を研究)、ハワードヒューズ医学財団リサーチアソシエイトなどを経て、2003年より近畿大学神経内科学講師および大学院総合理工学研究科講師(兼任)。2015年より現職。東日本大震災後には、東北大学地域支援部門・非常勤講師として公立南三陸診療所での震災支援勤務も経験、
2023年より現職。日本認知症学会(専門医、指導医)、日本人類遺伝学会(臨床遺伝専門医、指導医)、日本神経学会(神経内科専門医、指導医)、日本頭痛学会(頭痛専門医、指導医、評議員)、日本抗加齢学会(抗加齢専門医)など幅広く活躍する。

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