救急車よりも高いドクターヘリの救命率、社会復帰率
言うまでもないが、一般市民は直接、「ドクターヘリ」の出動要請はできない。消防本部司令室が出動要請するケースは、交通事故や災害のけがによる大量出血、大やけどをはじめ、脳卒中や心臓発作、異常分娩などの緊急治療が必要な場合に限られる。
また、異常分娩などのケースでは、産科の医師が同乗したり、ドラマ『コード・ブルー』のシーンでも見られるように、実地研修のために医師や看護師が同乗することもある。
もちろん、オーバートリアージ(緊急度の過大評価)が認められているので、119番通報だけで消防本部司令室が緊急事態と即断すれば、直ちに「ドクターヘリ」の出動要請になる。
しかも、キーワード方式(出動要請基準)が導入されているため、119番通報時の通報内容に予め設定されたキーワード(たとえば、目前で突然倒れ、蘇生処置中)などがあれば、直ちに出動要請となる。
また、医療過疎地、農山村の僻地から高度医療施設への長距離搬送が喫緊と考えられる重篤な症例の場合や、災害・渋滞などで救急車の出動が困難な状況なら、直ちに出動要請する場合もある。
ただ、「ドクターヘリ」は、365日スタンバイしているが、出動時間は午前8時半から日没前までと定められているため、夜間や有視界飛行できない悪天候の時は飛行できない(救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法)。
このように「ドクターヘリ」は、救急車のように傷病者を護送するだけでなく、医師と看護師(フライトナース)を救急現場へ迅速・適切に配備し、治療を早急に着手できるため、生死をさまよう重体の傷病者の生命を取りとめ、治癒期間を短縮するのが重大なミッションとなる。
HEM-Netの調査では、「ドクターヘリ」による救急搬出は、救急車の地上救急よりも、救命率が約3割以上も高く、完治後に社会復帰した傷病者の割合は約1.5倍に達している。
したがって、「ドクターヘリ」は、安全・迅速・確実な「航空搬送」を担う重要な基幹救急システムとして、その信頼性や機動性は安定している。空から空へ。「ドクターヘリ」の爽快フライト、ますます期待したい。
(文=編集部)