たった9つの質問に答えるだけで腰痛の慢性化が事前にわかる(depositphotos.com)
腰痛がやっかいなのは「慢性化してしまった場合」である。
ギックリ腰などで一時的に腰痛になってしまったとしても、ほとんどの場合が数日後によくなり、何事もなかったかのように日常生活を送っている。
これは風邪や胃腸炎などと同じように、「そのときは辛かったが、適切に管理して、数日、我慢すれば治る」というのと同じような構図である。しかし、実際には何年間も腰痛に苦しんでいる人が存在している(何年も風邪に苦しんでいる人は滅多にいない)。
腰痛が慢性化してしまう原因を考えるときに、この連載でも色々な角度から述べてきたが、重要なのは「生物医学的側面」からではなく、「生物社会心理的側面」から腰痛を考える必要がある、ということだ。
つまり、慢性化してしまう人は、腰痛に対する考え方に何かしらの傾向がある。そのような考えから、世界的に「腰痛が慢性化してしまうかどうかを簡単なアンケートで予測できる」という考え方が広がっている。その質問用紙は、東京大学の松平浩医師によって翻訳され、日本でも使用できるようになった。
質問用紙は「STarT Back Screening Tool(スタートバックスクリーニングツール)」と名付けられ、イギリスのKeele Universityが中心となって開発された。さまざまな面から成る9つの質問によって、その腰痛が慢性化するかどうかを「低リスク」「中度リスク」「高リスク」に分類する。
それぞれのカテゴリーには、推奨する治療方向が提示されているため、腰痛が生じた時点でこの質問用紙に答えると、自分の腰痛の予後をある程度予想することが可能になるという仕組みだ。