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【新連載「肥満解読~痩せられないループから抜け出す正しい方法」第1回】

「炭水化物の摂取量を減らすのは命の危険」という日本糖尿病学会の食事指導は本当に正しいのか?

炭水化物にはたくさんのブドウ糖が含まれているのでは?

 小学校や中学校の理科で以下のことは習っているはずです。

①炭水化物とは、でんぷんや砂糖(そして食物繊維)のことである。
②でんぷんをよく噛むと唾液腺のアミラーゼで分解されて甘い糖になる。
③でんぷんは最終的にはブドウ糖にまで分解されて吸収される。

 ブドウ糖は炭水化物の中にある! 少なくとも小学校や中学校では、そう習ったはずです。

 でも、それだと不思議です。血糖値が高くなる2型糖尿病の人が、どうして60%もの炭水化物を食べなければならないのでしょうか? 逆に、炭水化物の摂取量を減らすべきなのではないでしょうか? しかし日本糖尿病学会は「炭水化物の摂取量を減らすのは命の危険がある」と警鐘を鳴らしています。

●「極端な炭水化物制限『生命の危険も』 学会警鐘」(読売新聞:2012年7月27日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120726-00001662-yom-sci
 〈主食を控える「糖質制限食(低炭水化物食)」について、日本糖尿病学会は26日、「極端な糖質制限は健康被害をもたらす危険がある」との見解を示した。(中略)糖質制限食は、糖尿病の治療やダイエット目的で国内でも急速に広まっている。(中略)同学会の門脇孝理事長(東大病院長)は読売新聞の取材に対し、「炭水化物を総摂取カロリーの40%未満に抑える極端な糖質制限は、脂質やたんぱく質の過剰摂取につながることが多い。短期的にはケトン血症や脱水、長期的には腎症、心筋梗塞や脳卒中、発がんなどの危険性を高める恐れがある」と指摘。「現在一部で広まっている糖質制限は、糖尿病や合併症の重症度によっては生命の危険さえあり、勧められない」と注意した〉

 炭水化物の摂取量を40%以下にしたら命の危険があるみたいです。糖尿病の人なんか特に危険みたいですね……。いやいや、おかしいでしょ、理屈に合ってないでしょ?

 小学生の理科の知識で考えたら、糖尿病の人は脂質やたんぱく質を主に食べて、ブドウ糖が含まれているでんぷんや砂糖などの炭水化物摂取は減らすべきじゃないですか?

 実際にこのインタビューや提言が報道されてから日本糖尿病学会に対する批判が相次ぎました。ですが、2017年3月末の今になっても学会として上記の提言を訂正する動きは見られません。日本糖尿病学会は糖質制限は危険であるというスタンスを変えていないようです。

 小学生の素朴な考えと、日本糖尿病学会の提言。どちらが正しいとあなたは思いますか?

<追記>
 日本糖尿病学会としての提言の訂正は出ていませんが、門脇理事長は最近になって糖質摂取を減らすことに肯定的になって来られました。今、まさに日本の医療は変わろうとしているのかもしれません。

吉田尚弘(よしだ・ひさひろ)

神戸市垂水区 名谷病院 内科勤務。1987年 産業医科大学卒業、熊本大学産婦人科に入局、産婦人科専門医取得後、基礎医学研究に転身。京都大学医学研究科助手、岐阜大学医学研究科助教授後、2004年より理化学研究所RCAIチームリーダーとして疾患モデルマウスの開発と解析に取り組む。その成果としての<アトピー性皮膚炎モデルの原因遺伝子の解明>は有名。
その傍らで2012年より生活習慣病と糖質制限について興味を持ち、実践記をブログ「低糖質ダイエットは危険なのか?中年おやじドクターの実践検証結果報告」を公開、ドクターカルピンチョの名前で知られる。2016年4月より内科臨床医。

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