スキンシップで元気を与えるファシリティドッグ
「おとなの学校岡山校」では高齢者のサポートだが、子どもたちに前向きさや喜び、強い心を身につけてもらう――そんな役割をもつ犬もいる。
病気の子どもたちを支える「ファシリティドッグ」だ。「ファシリティ」とは、英語で「施設」を意味する。直訳すると「施設犬」だ。昨年、NHKで特集されたファシリティドッグの番組では、「神奈川県立こども医療センター」で働いているゴールデン・レトリーバーの「ベイリー」が紹介された。
ファシリティドッグは、ストレスを抱えた人々に愛情と安らぎを与えるようなトレーニングを積んだ犬だ。人々に自分の体を触ってもらい、それを楽しんでもらうのが仕事である。このスキンシップが、特に子どもにとって、ストレスを減らして元気づける効果があることは、研究で明らかになっている。
紀元前に遡るほど人間とは<古い友人>
施設や病院などを訪問し、利用者や患者と交流を図るのが仕事のセラピー犬も、人々を元気づけるのが仕事だ。でも、ファシリティドッグは、「決まった施設」に常勤しているのが特徴だ。つまり、その施設のスタッフの<一員>なのである。
短い訪問時間ではなく、スタッフとして日々一緒に過ごし、多くの時間を子どもたちに寄り添うのは、大いに意味がある。普段の遊びや散歩だけでなく、子どもたちが不安を感じるとき……手術前や採血、リハビリの時間なども共にできるからだ。犬のハンドラーが、看護師などの医療従事者だからこそできることだ。
そういう存在に子どもたちは、安心感や信頼、勇気や自己肯定感、適切な感情表現を得る。また、大好きな犬と仲よくなろうとして、ワガママが自然と矯正される側面もある。身勝手をしたら、犬が離れていってしまうからだ。
セラピー犬やファシリティドッグの役割は、人々に癒しや安らぎを与えること。 犬は、人間と一緒に暮らすようになったのは紀元前に遡るほど<古い友人>だ。家族であり仲間、安らぎを与えてくれる友人であり、良きパートナーだ。
近年、ペットとの触れ合いが人の心を癒すだけでなく健康にも貢献してくれることが分かり、ペットセラピーを積極的に取り入れる医療機関や介護施設も増えている。人間と苦楽をともにしてきた、このパートナーの活躍する新たなフィールドが注目されている。
(文=編集部)