発達障害の正しい理解が<共生>につながる
平成17年から施行された「発達障害者支援法」は、発達障害者の自立及び社会参加に資するように、その生活全般にわたる支援を図り、患者の福祉の増加に寄与することを目的としています。
この法律では、我が国で初めて発達障害を、広汎性発達障害(現在は「自閉症スペクトラム障害」)、学習障害、注意欠陥・多動性障害、そのほか通常低年齢で発症する脳機能の障害と定義付けました(同法第2条)。
冒頭でお話したような、自閉症スペクトラム障害と診断された少年もこの法律の対象者となるわけです。そして、同法第4条では、「国民は発達障害者の福祉について理解を深め、発達障害者の社会参加に協力するように努めなければならない」と記されています。
発達障害について、国民が正しく理解し、社会で共生することが求められているのです。
学習障害というのは、聞く、話す、読む、書く、計算または推論する、という能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態です。
また、注意欠陥・多動性障害は、年齢に不釣合いな注意力、衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、学業などに支障を来す状態です。忘れ物が多い、落ち着きがない、キレやすいなどの状態です。
ちなみに、このような発達障害で、学習や生活面で特別な支援を必要とする子どもは、小中学校の普通学級に約6.5%含まれているそうです。40人のクラスであれば2~3人はいることになります。
発達障害にある子が必ず犯罪をするわけではありませんので、偏見を持たずに正しく理解する必要があります。ただし、冒頭で触れたように、家庭裁判所で受理した一般少年保護事件では、発達障害の診断が下された人の割合が一般の人に比べて高いという報告もあります。
重要なことは、発達障害がある子どもたちを社会で支援していくことです。発達障害に対するさまざまな誤解や理解不足から、当事者やその家族が適切な支援を受けられずにいる状況があることは事実です。
したがって、正しい情報を社会が共有するとともに、幼少期から就労に至るまで、長期にわたる社会の支援が求められているのでしょう。
一杉正仁(ひとすぎ・まさひと)
滋賀医科大学社会医学講座(法医学)教授、京都府立医科大学客員教授、東京都市大学客員教授。厚生労働省死体解剖資格認定医、日本法医学会指導医・認定医、専門は外因死の予防医学、交通外傷分析、血栓症突然死の病態解析。東京慈恵会医科大学卒業後、内科医として研修。東京慈恵会医科大学大学院医学研究科博士課程(社会医学系法医学)を修了。獨協医科大学法医学講座准教授などを経て現職。1999~2014年、警視庁嘱託警察医、栃木県警察本部嘱託警察医として、数多くの司法解剖や死因究明に携わる。日本交通科学学会(副会長)、日本法医学会、日本犯罪学会(ともに評議員)、日本バイオレオロジー学会(理事)、日本医学英語教育学会(副理事長)など。