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【連載「死の真実が〈生〉を処方する」第33回】

「雨が降ると腰痛」「気圧が下がると頭痛」は本当だった 冬場に変死者が増える医学的な理由

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「気圧と頭痛」の医学的な因果関係は?(shutterstock.com)

 気温、気圧、湿度といった天候の変化は体調にさまざまな影響を与えます。医学的にはまだ不明な点も多いのですが、知っていると注意できるため有益な情報です。

 一般の診療でよく耳にする話は、「雨が降ると腰が痛くなる」「今日は寒いから関節が痛む」「3月はいつも頭痛がひどい」など――。

 確かにそのような声を聞く時は、寒冷前線が通過することがあり、その通過とともに風向きが変わったり突風が吹いたり、気温や気圧が急激に変化しています。

 多くの方が訴えるので、いろいろと調べてみると、それを裏付ける諸説がありました。「気温が下がると末梢の血管が収縮するので血流が悪くなる」「血流が悪くなると筋肉痛がひどくなる」という説明ができます。

 また、急な雨では気圧が下がりますが、「これが関節痛や頭痛の原因となる」という根拠もあります。このように、気温、気圧、湿度といった天候の変化が体調にさまざまな影響を与えるのです。

「痛み」に最も影響するのは<気圧の低下>

 ウェザーニューズという会社が、平成24(2012)年に実施した調査を紹介します。

 通常、雨が降る前に気圧が下がります。そこで1時間に気圧が1ヘクトパスカル低下した時に、そこに住む人に体調の変化について尋ねました。その結果、64%が「何らかの体調変化があった」と回答。さらに詳しく調べると、だるさを訴えていた人が42%、頭痛が24%、関節痛が13%でした。

 年代別にも差があり、頭痛は30代、だるさは20代、関節痛は60歳以上の人に多い傾向がありました。さらに性別を加味すると、40代女性では77%で何らかの症状を訴えて、約半数の人がだるいと回答していました。

 また、気分の変化を調べると、49%の人が「気分が普通ではない」と答え、そのほとんどは「気分が良くない」か、「あまり良くない」とのこと。低気圧や雨になると「うつ状態になる」という話を聞くこともありますが、この調査結果も同様の傾向でした。

 医療における調査でも、同様の傾向が報告されています。動物実験では、気温や気圧が低下することで痛みに対して敏感になることが分かりました。

 また、リハビリテーションに通院する患者さんを対象にした調査では、気圧、気圧の変化量、気温、気温の変化量といった4つの因子のうち、痛みに最も大きな影響を与えているのが、気圧が低下することでした。

 警察や医療関係者にはよく知られた話ですが、冬場は変死者が増えます。そのため、冬場の宿直は「忙しい」「たいへん」などと言い伝えられているようです。

一杉正仁(ひとすぎ・まさひと)

滋賀医科大学社会医学講座(法医学)教授、京都府立医科大学客員教授、東京都市大学客員教授。社会医学系指導医・専門医、日本法医学会指導医・認定医、専門は外因死の予防医学、交通外傷分析、血栓症突然死の病態解析。東京慈恵会医科大学卒業後、内科医として研修。東京慈恵会医科大学大学院医学研究科博士課程(社会医学系法医学)を修了。獨協医科大学法医学講座准教授などを経て現職。1999~2014年、警視庁嘱託警察医、栃木県警察本部嘱託警察医として、数多くの司法解剖や死因究明に携わる。日本交通科学学会(副会長)、日本法医学会、日本犯罪学会(ともに評議員)、日本バイオレオロジー学会(理事)、日本医学英語教育学会(副理事長)など。

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