積極的休息と消極的休息
一般的に"休息"というと、「座ってじっとして動かずにいる」「身体を横にする」というイメージがある。これは"消極的休息"と呼ばれ、確かに「それ以上疲れることはない」。しかし、「疲れをとり身体を回復させる」という観点からは、効果が薄い場合もあるという。
ロシアの生理学者、セチェーノフが発見した「右手を疲労させ、それを回復させる時に、左手を動かしたほうが回復が早まる」という「アクティブレストの法則」がある。
疲労している時に身体の活動を止めてしまうのではなく、適度に低い負荷で筋肉を動かすことで筋肉のポンプ作用を活性化させる。そうすることで心臓への静脈帰還が促進され、また代謝もあげることができる。つまり、じっと休むより適度に筋肉を動かしていたほうが回復が早いという論理だ。
適度な運動で頭もリラックス
疲れた時ほど、すぐに横になるのではなく「積極的に軽い運動をする」。それによって血行が促進され、老廃物の回収も早まり、疲労の回復を早めることができる。手軽にできる安全な運動としては、軽いジョギングや水泳、ヨガなどのストレッチが効果的だ。
さらに、軽い運動をすることで「脳がリラックスする」という効果も期待できる。ジョギング、縄跳び、ダンスなど、一定のリズムにのって筋肉の緊張と弛緩を繰り返す有酸素運動をおこなうことで、脳は余計なことを考えずにすむようになる。
加えて、酸素を十分に取り入れることができるのでリラックス状態を作り出すことができる。
頭の疲れを同時に癒すという意味では、ウオーキング、さらに負担でなければ軽いランニングも効果的だ。人間の筋肉の約7割は足腰に集中しており、そのなかでももっとも太い筋肉が大腿筋(太ももにある筋肉)だ。
筋肉からの脳の刺激は筋肉の太さに比例するので、足腰を使う運動をすることで脳に適度な刺激を効果的に与え続けることができる。
さらに、屋外をウオーキングすることにより、景色や匂いを感じ、振動や風の流れを皮膚で感じるため、さまざまな角度からたくさんの刺激を脳に複合的に与えることができる一種の「脳のマッサージ」効果を期待することができる。
カラオケやマッサージも積極的休息
また、積極的休息として有効なのが「カラオケ」。カラオケは通常使わない顔の筋肉を動かして刺激し、呼吸をリズミカルに繰り返す「大きな深呼吸」と同じ効果が得られる。お気に入りの曲で心身ともにノリながら歌えば、心も身体も効果的にリラックスさせることができるだろう。
注意したいのは運動の負荷の度合いだ。「これは楽チンすぎるなあ」というくらいが最適な程度で「ちょっとしんどい」と思うのは負荷をかけすぎていて逆効果になってしまう危険性がある。
人に施術してもらう指圧やマッサージも、れっきとした「積極的休息」なのだが、腰や肩の痛みをほぐそうと「痛いくらいの刺激」を求めてしまう場合が多い。それではせっかくリラックスし始めていた筋肉が緊張して「休息ではなく負荷」になってしまうので注意が必要だ。
一方、疲れて眠るのがいいとばかりに、寝る直前に負荷の高い運動をしてしまうと、交感神経を刺激して眠れなくなる可能性がある。寝る前の運動は、1時間以上前には終わらせよう。
1人専用のカラオケボックスも依然人気のようだ。会社帰りにカラオケで数曲歌って、軽くウオーキングして帰る、というのは、疲れを癒す「ベストプラクティス」なのかもしれない。
(文=編集部)