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【シリーズ「DNA鑑定秘話」第41回】

なぜ「イヌ」は人類最良の友になれたのか?ゲノム解析で友愛関係を決定づける「遺伝子」が判明

イヌが家畜化したのは3万2000〜1万8800年前

 最古の家畜動物であるイヌ。家畜化した時期は、人類が狩猟採集生活を営んでいた3万2000〜1万8800年前と推定される。以来、イヌはヒトとコミュニケーションを図りながら、協力し合う独自の能力を獲得した。

 『Current Biology』(2015年6月)によると、イヌとオオカミのGWAS(ゲノムワイド関連解析)の結果、イヌはイヌの唯一の祖先であるタイリクオオカミの子孫ではない事実が判明した。イヌとオオカミのDNAは、およそ99.9%が同一だが、種を超えた交雑によって遺伝子の流動化が起きたので、イヌのルーツを精確に辿るのは難しくなっている。

 だが、オーストリアにあるオオカミ科学センターのソフィア・ヴィラニ教授(動物行動学)は、「ヒトの助けや愛情を求める傾向が強いイヌ、ヒトに従属も依存もしないオオカミ、家畜化が進むうちに、独立独歩で平等主義のオオカミが従順なイヌへ進化したとは、まず考えられない」と推定している。

 イヌとヒト――。長い時間が遺伝子的・生物的な距離感を縮めた。以心伝心の波長が共振するように社会的・感情的な絆を強めた。人間同士でもソリが合わない人がいるが、イヌは受け入れてくれる。イヌを飼った経験がある人なら、誰もが知っている真理だ。

 現在、イヌかオオカミか判別できない3000点以上もの骨のGWAS(ゲノムワイド関連解析)が世界中の研究者たちによって進められている。数年以内にイヌのルーツが完全に解明されれば、わが家のタロベーにも、ご先祖様の話をしてやれる日が来るかもしれない。


佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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