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望まない妊娠を防ぐため<赤ちゃんロボット>で性教育したところ……

<母親体験>で10代の妊娠率が倍に!

 今回の実験で使われたのはRealityworks社の「RealCare Baby」という乳児シミュレーターロボット。コンピューター搭載で、排泄をしたりお腹が空いたりするだけでなく、機嫌が悪くなるといった感情表現の機能も付いている。

 生徒は数週間のプログラムで赤ちゃんロボットと生活を共に送り、母親を疑似体験するというものだ。

 ロボットのメーカーでは、性教育・ティーンの妊娠防止・育児のスキルアップ・児童虐待防止・幼児の健康管理などを利用シーンに挙げているという。

 今回の研究は、2003年から3年間にわたり、豪ウエスタンオーストラリア州で13~15歳の少女約3000人を対象に行われた大規模なものだ。

 このうち、1267人に赤ちゃんロボットを週末だけ貸し出し、それ以外の1567人は一般的な性教育を受けさせ、その後、被験者が20歳になるまで追跡調査を実施した。

 その結果、一般的な性教育を実施したグループで20歳までに妊娠したのは全体の4%。それに対して、赤ちゃんロボットを使ったグループで20歳までに1回でも妊娠した人の割合は全体の8%という結果になった。

 なんと倍近くの差が現れ、赤ちゃんロボットは10代の妊娠を抑制するどころか、妊娠を促す効果がある可能性が指摘されたのだ。

 この結果に関する理由は不明だが、研究主任のSally Brinkman氏は「この類の研究としては、過去最大規模。善意のプランにも予期しない結果を生み出す可能性があることを浮き彫りにした」とコメント。

 「若年妊娠を防ぎたいなら、おもちゃの赤ちゃんを使うアイデアは推奨しない」と結論付けている。

「可愛い赤ちゃんが欲しい!」という感情か?

 今回の実験は週末だけの限定体験。少女たちは、育児の本当の苦労を学ぶ以前に「可愛い赤ちゃんが欲しい!」という感情を抱いたのかもしれない。

 笑い話のような顛末だが、若年妊娠の問題は決して海の向こうの他人事ではない。日本産婦人科医学会によると、女性の晩婚晩産化に伴い20~30代の出生数は減り続けているのに対して、15歳未満での出生数は減っていない。

 10代の妊娠には多くのリスクがある。日本では約6割が人工妊娠中絶をし、特に15歳以下の中絶率は約85%に上る。

 出産しても当事者の社会的・経済的な困窮や、将来への不安は大きい。さらに望まない妊娠で生まれた子どもには虐待のリスクも高い。

 女性の体や子どもの命を守るためにも、早い年齢からの適切な情報提供は大切だ。しかし、世界18カ国の妊娠希望者を対象に行われた妊娠・不妊の知識に関する国際意識調査によると、日本は男性16位、女性17位という<性教育後進国>ぶり。

 教育関係者の間でも、「避妊や家族計画を含めた性教育は不要」とする向きがいまだに強い。

 10年以上試行錯誤をしてきた欧米諸国と比較すると、あまりに遅れているのが日本の現状である。少子化が進む国だからこそ、不幸になる母子を増やしてはならない。

<望まない妊娠>をゼロにする方法を考えるためにも、赤ちゃんロボットに関する研究には、今後も注視したい。
(文=編集部)

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