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パラリンピックは<感動ポルノ>か? リハビリが原点となった<障害者スポーツ>の歴史

乗馬は自閉症の症状軽減にも効果

 身体機能の回復のほか、知的障害者の教育的アプローチにも、乗馬は有効だ。馬との関わり方や世話の仕方を通じた、一種の心理療法だ。

 動物介在療法の特性として、精神的な落ち着きも得られる。とくに、自閉症の症状軽減に効果があるという研究報告は多い。自閉症者の課題であるコミュニケーション能力を培うメソッドも各種ある。

 パラリンピックで対象選手となる視覚障害者にも、乗馬は格別だ。馬上では、風を切って走れる。この感覚は、言葉では言い尽くせないという。

 経路が決まっている競技では、馬場の各所にコーラー(caller)と呼ばれるサポーターが立ち、声掛け(call)して騎乗者に現在地を知らせる。選手は、その声を頼りに残りの距離の見当をつけて、手綱を操作する。派手なパフォーマンスではないが、まさに<人馬一体>だ。

<馬のスペシャリスト>宮路満秀さんが出場

 今回のパラリンピックには、日本から宮路満秀さんが選手として参加する。調教師として、長年馬と共に暮らしてきた、馬のスペシャリストだ。

 脳出血による右半身麻痺と、高次脳機能障害で、話すこともままならず、一度は馬から遠のいたが、リハビリを兼ねて乗馬を始め、パラアスリートとして、再び馬と生きる生活をスタートさせた。馬に乗るうちに、言葉も話せるようになってきたという。

 パラリンピックは、障害者による表層的な感動のみならず、心身の向上やヒトの能力や限界、という視点を持ち合わせて、観戦してもらいたいものだ。

 もちろん、トレーニングを積み重ねたアスリートたちの類稀なる技の競演に感動はつきもの。そこに、障害者か否かのカテゴライズはない。
(文=編集部)

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