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認知行動療法よりも簡単で安価な「うつ病」の精神療法とは?

行動活性化療法の特徴と可能性は?

 行動活性化療法であれば、うつ病患者がトークセラピーを受けやすくなり、待機期間を短縮できる可能性がある。この研究についての研究論文をオンライン版「The Lancet」(7月22日)に発表した英エクセター大学のDavid Richards氏は、「この知見は認知行動療法の優位性に疑問を投げかけるものだ」と述べている。

 認知行動療法が患者の考え方に焦点を当てる「内から外」の治療であるのに対して、行動活性化療法は患者が行動を変えることを助ける「外から内」への治療だ。

 認知行動療法は患者に生じる否定的な考えや信念を突き止め変えさせるが、行動活性化療法は行動と気分を関連づけるように促すものだ。行動活性化療法におけるセラピストは、患者が生活の中でより前向きになる状況を求め、経験することを手助けする。また、困難な状況に対処するのを助け、役に立たない習慣的行動に代わる代替案を見つけさせる。

 今回の研究では、成人のうつ病患者440人を、行動活性化療法群と認知行動療法群に無作為に分けて行われた。治療開始から1年後、両群で治療を継続していた約3分の2の患者において、うつ病の症状に50%以上の軽減が認められた。両群でうつ症状のない日数と不安症の診断数に差は見られず、寛解に達する比率は同等であった。そして行動活性化療法群の治療コストは認知行動療法群に比べて20%も低かったという。

 日本でも行動活性化療法が普及することで、患者が医療費の負担を抑えられたり、専門家の訓練が容易になったりすることが期待される。うつ病治療の進歩が、いまだ3万人近くという年間自殺者数の減少に寄与することを期待したい。
(文=編集部)

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