行動活性化療法は患者が行動を変えることを助ける「外から内」への治療法(shutterstock.com)
成人のうつ病治療が今までよりも身近なものになりそうだ。精度が高い療法としてすでに広まっている「認知行動療法」。これよりも使いやすい療法が、このたび新しい研究によって示されたのだ。
その療法とは「行動活性化療法」。認知行動療法と同程度の効果があるこの療法には、精神医療従事者が最小限の訓練を受ければ実施することができ、そのうえ費用が大幅に安くなるという利点がある。
うつ病治療は大きく3つに分けられる。それは「休養」「薬物療法」「精神療法」である。患者の状態によって、医師はそれらを組み合わせたりして最も適した治療を行うことになる。
休養は、仕事や家事、学校といったストレスの原因に触れないようにすることで回復を図る治療法だ。自宅や静養地で実施するほか、専門の医療機関に入院するという方法も考えられる。
薬物療法は、薬物によって症状を改善し、再発を予防するという治療法だ。使用される薬物には抗うつ剤、抗不安剤、睡眠薬などがある。
精神療法は、医師との対話や様々な交流を通しておこなう治療法である。自分の性格や考え方の傾向、うつ病の原因などを理解し、症状が悪化しないようにする。医師が患者に話を聞くことで、不安な気持ちをくみ取ったり、症状改善のためのアドバイスをしたりして治療を進めていく。
認知行動療法とは何か?
冒頭で紹介した認知行動療法は精神療法のひとつ。これは物事のとらえ方や考え方をうつ病に繋がらない方向へ変わるようサポートをするもの(認知療法)、行動に目標を設定しいた成果が得られるようにしていくもの(行動療法)である。具体的には以下の①〜④の流れで治療は進められる。
①患者と面接を進め相談しながら作成する治療方針
②行動的技法を使っての、生活のリズム作成の工夫
③自動思考に焦点を当ててのその根拠と反証の検証
④治療集結へ
認知行動療法は、高度な訓練を受け、高い報酬を得ている専門家(セラピスト)により実施される。そのため多くの国では、高額な費用が支払える患者、あるいは医療保険に加入している患者しか利用できない。そのうえ治療の順番が回ってくるまでに時間がかかることもままある。たとえば米国では、うつ病患者のうち12カ月以内に何らかの心理療法を受けたことのある人は4分の1にとどまっており、治療のハードルの高さが伺える。