「美しい国」の救世主は「マイルドヤンキー」?
半年やれば後輩ができ、1年続けば先輩が減り、2年で中堅、3年持てば「現場の要」といわれる介護業界。その人材不足の活路を〈マイルドヤンキー待望論〉として説いた厚労省社会・援護局の福祉人材確保対策室長(当時)への違和感は、当サイトでもかつて掲載した。
*「厚労省が本気で考える"マイルドヤンキー"での介護人材不足対策は成功するのか?」
介護職は仕事の内容の負担が重い割りに、いまだ低賃金だ。平均給与は約22万円と、全業種平均に比べ10万円以上も低いといわれている。離職者も多く、平均勤続年数は全業種平均の半分の6年にとどまる。
「負け組の温床」と揶揄されて、まともな教育時間も組めないままに、次々と人が入れ替わってゆく介護業界。不特性多数の外来者や人材応募者の受け皿として、危険なリスクをどう回避すべきなのか。問題は山積する一方だが、人材は一向に根付かない。
植松聖容疑者を知る近所の人々は、「挨拶もよくする」「とても明るい青年」と異口同音に語り、地元や仲間を大切にする一面も多く聞かれる。
そんな青年が、「教職免許を取るために児童養護施設でボランティアをしていた」と入職を希望してきたら、介護現場では前向きに採用するだろう。多少の問題があっても、立派な人材に育てようと努めているのが介護現場の実情だ。
今回の事件を受けて政府は28日、関係閣僚会議を首相官邸で開いた。安倍晋三首相は「再発防止に全力を」と述べ、塩崎恭久厚生労働相や河野太郎国家公安委員長らに対し、施設の安全確保強化や「措置入院」の運用見直しを早急に検討するよう指示した。
出頭直前、植松容疑者がSNS上に綴ったコトバは「世界が平和になりますように。beautiful Japan!」だった。かつて自著の新書タイトルで『新しい国へ~美しい国へ』と謳った安倍首相は、介護・福祉の課題が複雑に絡み合うこの問題と、どう戦うつもりなのだろうか?
(文=編集部)