「ウナギの風味にとても似ている」と答えた人が8割
このような事情を熟知していた有路教授は、完全養殖を目指すのではなく、さまざまな魚を蒲焼きにして調べながら、試行錯誤を重ねて模索した。その結果、風味、食感、香り、脂の乗り具合がウナギに最も近いナマズに着目し、開発に取り組んできた。
「ウナギ味のナマズ」は、独自に配合した餌を与えながら、清冽な地下水でゆっくりと育てるため、ナマズ特有の泥臭さがよく抑えられ、しかもウナギ風味の脂がしっかりと乗っている。昨年の試食会では「ウナギの風味にとても似ている」と答えた人が8割を超えた。
近畿大学直営の料理店やウナギ専門店などで食した人も「ナマズと言われなければ、ウナギと思ってしまう風味と食感だ」と驚く人が多かった。「ウナギ味のナマズの蒲焼き」は、4~8月の5カ月間に全国のスーパー、百貨店、小売店で1万数千尾が出荷される。
有路教授によれば、「ウナギ味のナマズの蒲焼き」は、ウナギの代用品でなく、ウナギと肩を並べる「盛夏を乗り切る新食感」としてブランディングしていくという。問題の販売価格も、将来は1人前約2000円から500円内外までプライス・ダウンできる目算もある。さらに、ナマズの刺し身や天ぷらなどのメニューも開発し、通年販売も視野に入れている。
ちなみに、30日限定だが、近畿大学水産研究所グランフロント大阪店と近畿大学水産研究所銀座店へ行けば、ランチタイムなら「近大発ナマズ重」(2200円)、ディナータイムなら「近大発ナマズ蒲焼き」(2000円)が食べられる。
起きるはずのない事件が時には起きることを「山の芋、鰻になる」とたとえる。「ウナギ味のナマズの蒲焼き」は、さしずめ「河のナマズ、ウナギに大変身!」という珍事かもしれない。
養殖技術のイノベーションから生まれた「ウナギ味のナマズの蒲焼き」!貴重な天然資源を守りながら、美味しい、安い、元気になる旬の食文化として、夏の爽やかな風物詩になりそうだ。
(文=編集部)