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【連載「Universal Jintai Japan(UJJ)=人体迷宮の旅」第1回】

【閲覧注意】ずらり並ぶ難病・奇病の実物標本。近代医学の光と闇が見える世界最高峰の人体博物館「ムター・ミュージアム①」


 

近代医学の登場前夜の闇を照らし出すコレクション群


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全身の脂肪が石鹸状なった女性のミイラ The Soap Lady~ the Mütter Museum


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ムター美術館を代表する頭蓋骨コレクション


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リアルすぎる解剖モデル~ the Mütter Museum

 ミュージアムの母体となったフィラデルフィア医師協会は、1787年、アメリカ近代医学の発展を目指し、「米合衆国建国の父」のひとりとされるベンジャミン・ラッシュ(Benjamin Rush)らが立ち上げた私設団体である。当時、個人コレクションとして集められていたものを、医学の発展のために役立てるべく、ここにコレクションされていった。それゆえに、現代とは異なる医学的な倫理観のもとに収集された、貴重な標本や資料、無謀とも思える実験的な治療の成果や医療器具などを網羅的に見ることができる。

 近代医学は、衛生概念の登場と大きく関係している。19世紀には、輸血・輸液療法の確立、麻酔法の発達、パスツールによる病原菌の発見、ペニシリンによる抗生物質の開発などによって、それまで困難であった高度な外科手術が可能となった。

 フリークスといわれる人たちによく見られる肥大した腫瘍などは、切除面からの感染症で死に至るリスクは高かった。そのため多くのフリークスたちは、見世物小屋でその姿を晒して生きていくしかなかった。その後、彼らは近代医学の登場とともに、冒険的かつ実験的な手術を受けていくこととなり、その症例の積み重ねが外科学の大きな進歩にも貢献していく。

 ムター・ミュージアムで観ることのできる医学標本の数々は、近代医学の登場前夜とそれ以降をまたぐように収集されてきたものである。これらの貴重なコレクションは、輝かしい近代医学のはじまりばかりでなく、過去の歴史に隠された医学の闇の部分までも見せてくれるものなのである。次回は、個々のコレクションをじっくりと見ていきたい。

[基本情報]
ムター・ミュージアム
『MÜTTER MUSEUM』
The Colledge of Physicians of Philadelphia
19 S 22nd Street Philadelphia, PA 19103
TEL 215.560.8564
http://muttermuseum.org/
★年中無休(感謝祭、12月24日&25日、1月1日以外)
10:00〜17:00、大人 $16(は大人同伴 詳細はHPで)
http://muttermuseum.org/visit/hours-admission/


連載「Universal Jintai Japan(UJJ)=人体迷宮の旅」バックナンバー

ケロッピー前田(けろっぴー・まえだ)

身体改造ジャーナリスト。1965年、東京生まれ。千葉大学工学部卒後、白夜書房(コアマガジン)を経てフリーランスに。世界のアンダーグラウンドカルチャーを現場レポート、若者向けカルチャー誌『ブブカ』『バースト』『タトゥー・バースト』(ともに白夜書房/コアマガジン)などで活躍し、海外の身体改造の最前線を日本に紹介してきた。近年は、ハッカー、現代アート、陰謀論などのジャンルにおいても海外情報収集能力を駆使した執筆を展開している。著書『今を生き抜くための70年代オカルト』 (光文社新書) が話題に。近著に『CRAZY TRIP 今を生き抜くための“最果て"世界の旅』(三才ブックス)がある。

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