MENU

【連載「更年期をのりこえよう!」第18回】

ホルモン補充療法での「経口剤」、「膣剤」、「添付剤」はどのよう選ばれるのか?

それぞれの治療法にメリットとデメリットがある

●膣剤
 膣に直接、挿入する錠剤である。膣炎や膣萎縮の予防、膣の潤いが失われたことによる性交痛などに効果があり、エストリール膣錠やホーリンV膣錠を使用する。全身症状がなく膣の局所的な悩みであれば、膣剤で十分である。
デメリットは、簡便さに欠け、慣れるまで挿入するのに手間がかかることだ。副作用として、膣分泌物が増えたり、性器が腫れたりすることがある。

●貼付剤
 貼付剤(パッチ)は皮膚に貼って使用する。貼付剤に含まれる経皮エストロゲンは、皮膚から吸収され、肝臓を通過しないで直接大循環に入るため、安定した血中濃度が得られ、少量で効果が持続するという特徴がある。このほか、経口剤と比べて中性脂肪が上昇せず、血栓症のリスクが増えないというメリットがある。動脈硬化の発症には血管の炎症が密接に関与しているが、経皮エストロゲンには血管の炎症を抑制する作用があるため、心筋梗塞など動脈硬化が原因でおこる疾患にも有用であることがわかってきた。

 通常、下腹部か背部の皮膚に一枚貼布し、週に2回ほど貼り替える。従来、貼付剤にはエストロゲン剤のエストラーナテープなどしかなく、別にプロゲステロンの経口剤を服用しなければならない面倒があったが、エストロゲンとプロゲステロン混合の貼付剤であるメノエイドコンビパッチが発売されて、胃腸や肝臓の弱い人でも使用できるようになった。

 デメリットは、使用量の調節が難しいことだ。副作用として、貼布部位の皮膚に痒みやかぶれがみられることがあるので、敏感肌の人や貼布部位に皮膚疾患がある人には不向きである。

●ジェル剤
 ジェル剤は皮膚に塗布して使用する。エストロゲン剤のディビゲルやル・エストロジェルがある。ル・エストロジェルは保険が効かないため自費となる。

 このように、HRTで用いられる経口剤、膣剤、貼布剤にはそれぞれにメリットとデメリットがあるため、年齢や不快症状によって薬の投与方法や投与経路を使い分けている。その人にピッタリと合った治療法さえ見つかれば、霧が晴れたように不快症状が消失していくのが、更年期治療の醍醐味といえよう。


連載「更年期をのりこえよう!」バックナンバー

宮沢あゆみ(みやざわ・あゆみ)

あゆみクリニック院長。早稲田大学卒業後、TBSに入社し、報道局政治経済部初の女性記者として首相官邸、野党、国会、各省庁を担当。外信部へ移り国際情勢担当。バルセロナオリンピック特派員。この間、報道情報番組のディレクター、プロデューサーを兼務。その後、東海大医学部に学士編入学。New York Medical College、Mount Sinai Medical Center、Beth Israel Medical Center へ留学。三井記念病院、都立墨東病院勤務などを経て「あゆみクリニック」を開業。働く女性に配慮して夜間や土曜も診療しており、思春期から更年期までの女性のトータルケアに力を入れている。
あゆみクリニック」完全予約制。診療日:月,火,木 11:00~14:00 17:00~20:00 土 11:00~16:00

宮沢あゆみの記事一覧

宮沢あゆみ

関連記事
アクセスランキング
専門家一覧
Doctors marche