客の意識を大きく左右するバンドワゴン効果
このような客の意識を大きく左右する群集心理がバンドワゴン効果(Bandwagon Effects)だ。バンドワゴン効果とは、あるブランドやサービスを消費する人が多ければ多いほど、流行しているという空気が社会に自然と醸成されるため、そのブランドやサービスから得る満足感、安心感、信頼感が強化される同調効果をさす。
パレードの最後尾についつい並ぶ行動習性から生まれた言葉だ。付和雷同しやすい人間がもつ群集心理を裏づける最も基本的な習性といわれる。
つまり、行列マーケティングは、口コミなどで情報を拡散させつつ、意図的に並ぶ心理を仕掛ける。人は人気店や行列店にやすやすと並んでしまうので、バンドワゴン効果によって並ぶ人が多くなればなるほど、人はますます行列を作ることになる。まさに行列シンドロームの感染力だ。
行列シンドロームを脳科学的に見れば、安心感をもちたいという欲求に根ざしている。マジョリティに属していれば安心、赤信号みんなで渡れば怖くないの群集心理だ。
そのメカニズムを動かす張本人は何か? 大脳で安心感を司りながら、心のバランスを整えている神経伝達物質のセロトニンに他ならない。セロトニンは人間の心身の安定に深く関わっていることから、オキシトシンとともに幸せホルモンとも呼ばれる。
セロトニンが減れば心配性に陥って悲観的になり、増えれば安心感が強まって楽観的になりやすい。セロトニンが少ない人の割合は、日本人60%、アメリカ人20%。日本人は心配性の人が多いらしい。
つまるところ、人間に備わったホメオスタシス(恒常性)をキープし、安心感を感じていたいという充足欲求を満たすために、日本人は行列という同調行動をとりやすい。
同調快感(シンククロニシティ・コンフォート)のバランスを保とうと、ひたすら行列に加わる。セロトニンがもたらすこの快感こそが、行列マニア、行列オタクになる集団心理の連鎖の真相だ。
(文=編集部)