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【連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」第18回】

危険ドラッグは下火になったが、依存者の治療・ケアが深刻な課題として残る

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薬物依存から抜け出すのは難しい(shutterstock.com)

 覚醒剤依存症となったプロ野球の元スター選手・清原和博容疑者は、野球で獲得した輝かしい名声のみならず、家庭を崩壊させ、心身ともに健康を損なって、転落の人生を歩んでしまった。そして、「俺が清原に覚醒剤渡した」と証言し、2006年10月、覚醒剤取締法違反の疑いで逮捕、懲役1年6月・執行猶予3年の有罪判決が下された元プロ野球選手の野村貴仁氏は、なかなか覚醒剤をやめることができず、「中止した後も心身ともに長期間、多くの苦痛を味わった」と覚醒剤の恐ろしさを警告する。

 この連載のテーマである危険ドラッグは、覚醒剤や麻薬などと異なり、街中のショップやインターネットを利用して比較的安価で、しかも簡単に購入することができたため、2010年頃より、一般市民、特に若年者を中心に、爆発的に広まった。そして利用者たちは、自分自身の精神身体的荒廃のみならず、危険運転による交通事故、傷害や殺人事件など、数多くの重大な社会問題を引き起こし、市民に多大な迷惑を掛けた。

 しかしその後、警察などの行政機関による徹底した取り締まりの強化、包括指定制度などの司法による法の整備が功を奏し、2014年にはいわゆるヘッドショップをほぼ消滅させ、翌年7月には、ついに厚労省による完全制圧宣言に至った。マジックマッシュルームなどから始まった危険ドラッグに終止符が打たれるものと期待されている。

危険ドラッグ依存症例の特徴

 しかし、前述した元プロ野球選手の覚醒剤長期使用例のごとく、インターネットや反社会的組織、また中国などからの密輸入品などの入手を継続した危険ドラッグ中毒患者たちも、同様に薬物から離脱できずに、依存症に陥ってしまうことが数多く認められる。

 確かに現在、新たな危険ドラッグ中毒患者は著明に減少しているが、長年、断ち切れず使用し続けたこれらの患者は「負の遺産」として大きな影を落としている。

 これらの危険ドラッグ依存症例の特徴は以下のようなものが挙げられる。

①清原容疑者が桑田真澄氏の忠告や助言を拒絶して、孤独に陥り、ますます深みにはまってしまったのと同様、危険ドラッグ中毒者たちも、その有害性を指摘しする家族や友人の説得を拒否し、孤独に陥り、さらにドラッグにのめりこんで深刻な状態になってしまう。

②「皆でやれば怖くない」と言わんばかりに、ほかの依存症患者や不良組織との結びつきが強まる機会が多くなり、さらに健康を害する。

③ドラッグ使用の初期段階に医療機関を受診しなかったために、興奮、健忘、多幸感、悪心、頭痛、痙攣などの精神身体症状が悪化してしまい、不可逆的状態になってようやく受診するが、その時には短期間での回復は望めない症例が多数存在する。

④危険ドラッグでは満足できず、覚醒剤や大麻などに手を染めてしまい、より危険性が高まる。

横山隆(よこやま・たかし)

小笠原記念札幌病院腎臓内科。日本中毒学会認定クリニカルトキシコロジスト、日本腎臓学会および日本透析学会専門医、指導医。
1977年、札幌医科大学卒、青森県立病院、国立西札幌病院、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター助手、札幌徳洲会病院腎臓内科部長、札幌東徳洲会病院腎臓内科・血液浄化センター長などを経て、2014年より札幌中央病院腎臓内科・透析センター長などをへて現職。
専門領域:急性薬物中毒患者の治療特に急性血液浄化療法、透析療法および急性、慢性腎臓病患者の治療。
所属学会:日本中毒学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本内科学会、日本小児科学会、日本アフェレシス学会、日本急性血液浄化学会、国際腎臓学会、米国腎臓学会、欧州透析移植学会など。

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