ACTN3遺伝子は瞬発力、ACE遺伝子は持久力!?
一方、ACTN3遺伝子は短距離走のスピード・パワー・瞬発力・スタミナなどに関係するとか、ACE遺伝子は忍耐力・持久力に関連があるという欧米各国の研究報告はある。
だが、「短距離走のパフォーマンスの個人差は、ACTN3遺伝子やACE遺伝子だけでは十分に説明できない。関わるのはパフォーマンスの差のうち3%程度に過ぎない」と説明する。
つまり、数個の遺伝子を調べるだけで、スポーツに関わる運動能力や適性を判断したり、トレーニングの方法や種目を変えるのは無意味になる。
また、専門家グループは「これらの遺伝子検査サービスは科学的な知見が不足している。遺伝子に関する情報をユーザーに提供する時の遺伝カウンセリングも十分に行なわれていない」という。
成績や才能を特定できるレベルにはほど遠い
そして、「クオリティも信頼性も低い遺伝子検査サービスは、スポーツをしたい人の意欲や好奇心を妨げるだけでなく、チャレンジしたい子どものチャンスや権利を奪いかねない」と強い懸念を表している。
さらに、専門家グループは、より大規模な研究が行われれば、スポーツと遺伝子との関係が明らかになる可能性はあるものの、現状では解析ノウハウの限界やリスクが大きく、スポーツの成績や才能を特定できるレベルにはほど遠いので、信頼できないと結論づけている。
この数年のうちに、ヤフー、ジーンクエスト、ジェネシスヘルスケア、DeNAなどが進出したことで、日本の遺伝子検査サービスのビジネスシーンも様変わりした。だが、今回の専門家グループが強く指摘するように、玉石混交の疑念もぬぐいきれないのも事実だ。
解析技術の精度、判定の科学的根拠、利用者への精度や限界の丁寧な説明、検査の質を高める企業努力、研究開発の推進など、遺伝子検査サービスが取り組むべき課題は尽きない。健全なビジネス育成をめざす認定制度導入の動きも追風になりそうだ。
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(文=編集部)