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なぜ、高カロリー・高脂肪食でも“食を愉しむフランス人”はスリムなのか?

太りやすそうで、実は痩せやすいフランスの食生活

 フランスでは、バターが決め手のクロワッサンやキッシュ、砂糖たっぷりのフランス菓子やマカロンがとてもポピュラー。

 街の至るところにブーランジェリー(パン屋)があり、人々は毎日のように、こうした一見すると太りやすそうな高カロリーの食品を購入して食べている。肉もチーズもよく食べられるし、ワインも愛されている。ふわふわのオムレツもフランス人がこよなく愛する一品だ。

 だが、これらの食事は、実は低GI(グリセミック・インデックス)食品が多い。GIとは血糖値上昇の度合いを示す指標だ。その数値が低いほど血糖値の上昇がゆるやかで太りにくい。日頃から、こうした低GI食品を口にしているパリジェンヌたちは、自然と太らない食生活を営んでいるといえるだろう。

 手軽に食べられるテイクアウトメニューは、バゲットのサンドイッチがいちばん人気。

 糖質制限では禁じ手である「炭水化物」のバゲットでも、具材はハムやチーズが主流だ。一緒に食べることで血糖値の上昇が押さえられる。

早食いドカ食いしないのがフランス流

 ほかにも注目したい理由がある。ゆっくりと味わいながら食事していることだ。サンドイッチひとつ取っても、かみしめるように、のんびり味わう。カフェでサンドイッチとコーヒー1杯だけで、街の景色を眺めながら、仲間とおしゃべりしながら、そのひとときを楽しむ。ランチタイムでも、日本のビジネス街のような早食いの光景は、あまり見られない。

 食事やスイーツは見た目も味も魅惑的で、つい食べすぎてしまいそうだが、大食いしないのもフランス流。腹八分で1日3度の食事を大切にする。これも血糖値の急上昇を引き起こす空腹状態をつくらない、太りにくい食べ方だ。

 実はMEC食を提唱する渡辺医師が、患者に指導している重要なポイントのひとつが、食事の際に「ひと口30回噛む」ことだ。食欲は、脳の視床下部にある空腹中枢と満腹中枢の働きで調節されている。噛んだときの刺激は、視床下部にある満腹中枢の周囲部位に信号を送る。

 よく噛めば、神経活性物質が放出されて満腹中枢を活性化する。よく噛む人ほど満腹感の形成が良好で、肥満を避けることができる。

 また、水をよく飲むのも、フランス人のスレンダーな体型の秘訣だろう。ジュースやコーラよりも、水が一般的だ。

 とくに、炭酸水が定着していて、店頭でもレストランでも、ガス無し(普通の水)とガス入り(炭酸水)が必ず用意されている。

 炭酸水は、整腸促進や便秘解消、デトックスなど、その健康効果が注目されている。フランス人はそれをよく承知しており、就寝前や起床後など、日常的に愛飲している。

 一方で、店頭にはスナック菓子が置いているし、若者にマクドナルドは人気だ。

 だが、街中で見かける食べ歩きでは、サンドイッチなどの手作りが圧倒的だ。これが隣国のベルギーでは、大人も子どもも、スナック菓子を片手に食べ歩く人が目に付く。

 当然、恰幅のいい体型が多い。人種の違いはあれど、やはり食生活の違いに否が応でも着目してしまう。

 カロリーは高くても血糖値の上昇しにくい食べ合わせで、少量でも満足度の高いものを、ゆっくりと時間をかけて食べる。そして、清涼飲料水でなく水を飲み、ジャンクフードを避け、新鮮な食材を選ぶ。

 こうした食生活が、フランス人のスリムボディの秘密ではないだろうか。
(文=編集部)

渡辺信幸(わたなべ・のぶゆき)

こくらクリニック院長。1963年生まれ。1991年、名古屋大医学部卒業後、医療法人沖縄徳州会中部徳洲会病院に入職。伊良部島診療所院長、宮古島、石垣島徳洲会病院、徳州会新都心クリニック院長を経て、2010年6月、徳州会こくらクリニック(那覇市)院長に(現職)。離島、救急医療の経験から、予防医療の重要性を説き、MEC食の啓発活動に至る。著書に『一生太らない体をつくる「噛むだけ」ダイエット』『日本人だからこそ「ご飯」を食べるな~肉・卵・チーズが健康長寿をつくる』『「野菜中心」をやめなさい~肉・卵・チーズのMEC食が健康をつくる』『肉食やせ! 肉、卵、チーズをたっぷり食べるMEC食レシピ111!』。テレビ出演『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京)、『林修の今でしょ! 講座』(テレビ朝日)。全国で講演活動。自らがラジオ番組のパーソナリティーを務めるFMレキオ80.6MHz「なべちゃんのレキオでダイエット」も好評。

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