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【連載第4回 これから起きる“内部被ばく”の真実を覆う、放射能の「安心神話」】

内部被ばく線量を隠す理由とは? ICRPでも内部被ばく委員会が廃止に

全身化換算のトリックとは

 そして内部被ばくについても、外部被ばくと同様に身体の臓器に均一に吸収されると仮定して計算されているのです。しかし、内部被ばくの影響は、それでは正確にとらえられません。アルファ線は体内では40ミクロン程度しか飛びませんし、ベータ線も周囲数ミリの細胞にしか当たりません。

 ですから実際に放射線が当たるのは、アルファ線やベータ線を出す物質の周辺の何層かの細胞であり、アルファ線やベータ線による内部被ばくの場合は、1キログラムの塊に放射線は届くことはないのです。

 正確には、実際に当たっている細胞集団の線量を計算すべきなのですが、全身化換算して表現するために、内部被ばくの線量は極めて低い値となります。

 たとえて言えば、目薬を口から2~3滴投与した投与量を全身化換算しているようなものです。目薬は目に点すから効果や副作用があるわけですが、それを口から2~3滴飲んでも全身的にみればまったく影響ない量であることはおわかりでしょう。

 線量が同じであれば、外部被ばくも内部被ばくも影響は同等と考えると取り決められているので、内部被ばくは極少化された線量となるため、問題とならないとされてしまうのです。こんな計算上のトリックがなされています。ICRPの考え方は、吸収線量が同じであれば、総損傷数は同じと考え、発がんリスクも同じと考えています。

西尾正道(にしお・まさみち)

北海道がんセンター名誉院長、北海道医薬専門学校学校長,北海道厚生局臨床研修審査専門員。函館市生まれ。1974年、札幌医科大学卒後、独立行政法人国立病院機構 北海道がんセンター(旧国立札幌病院)で39年間がんの放射線治療に従事。2013年4月より現職。著書に『がん医療と放射線治療』(エムイー振興協会)、『がんの放射線治療』(日本評論社)、『放射線治療医の本音‐がん患者2 万人と向き合って-』(NHK 出版)、『今、本当に受けたいがん治療』(エムイー振興協会)、『放射線健康障害の真実』(旬報社)、『正直ながんのはなし』(旬報社)、『被ばく列島』(小出裕章との共著、角川学芸出版)、『がんは放射線でここまで治る』(市民のためのがん治療の会)、その他、医学領域の専門学術著書・論文多数。

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