ストレスが舌を動かなくする
いっぽうストレスがあると、舌が動かなくなり、ドライマウスを招くという。
「ストレスがあると、どうしてもうつむきます。人間、うつむき加減になると、奥歯を噛むので、舌が動きません。だから目線は、水平がよいのです。自転車に乗るとき、みんな前を見るでしょう。あれぐらいが、いいのです。『歩くときは、自転車の目線で』と私は、よく患者さんにいっています」
それから、もうひとつ。飲み物にも注意してほしいという。
「飲み物は水にしましょう。水が、だ液を分泌しやすくするのです。毎日水を飲みましょう。お茶やコーヒーを水に変えてみるのもいいでしょう。カラオケに行ったら、歌って存分に舌を動かし、水を飲むというのが、だ液分泌にはおすすめです」
とにかく、「口の中が乾いているな」と感じたら、ガムを噛むまねをしたり、目線を水平にしたり、誰かに話しかけたりして、だ液の分泌量を増やし、口の中で唾液の流れを作りましょう。こうすることで口臭が防止できるのだ。
お経にも書いてある歯の磨き方
とはいえ、だ液がサラサラでも、虫歯や歯周病があると臭いの元になる。また、全ての病気はドライマウスを引き起こすという。口の中だけでなく、全身も健康であることが、口臭防止の第一歩だ。
ところで、口臭を気にすることは非常に現代的な感じがするが、じつは、口臭エチケットの歴史は、2500年もさかのぼるという。
「紀元前5世紀の人。かのお釈迦様も、口臭をコントロールしなくてはいけないと言っています。お釈迦様は、弟子に歯木の枝で歯を磨くように悟され、経典にも載っています。それによると、口臭予防のために、起きてすぐ磨きなさいと教えています」
起きぬけの最も悪玉菌が繁殖しているだ液を捨てて、フレッシュな息に整えることが、朝の身だしなみであり、修行であったのである。
(取材・文=増澤曜子)