「障害者の性」を避けるコメンテーターたち
TVの限界かもしれないが、一連の不倫騒動を「障害者の性」について正面から取り上げる番組はないようだ。一般視聴者側も、「障害者も不倫しちゃうんだ!?」「しかも5人とは……」という好奇な視点が大勢だっただろう。
健常者のなかには、障害者にも同じように性欲があることや、彼ら専用の性処理業務があることさえ想像だにしない人も決して少なくない。
2004年、河合香織氏のルポ『セックスボランティア』が話題を呼び、刊行当時は「性の介助者」の存在がTVでも取り上げられた。
しかし、結果は一過性のネタに終始し、今回の乙武氏の騒動が「障害者の性」問題再考の契機となる気配もない。
奇しくも一石を投じた障害者の射精介助
たとえば、あなたは「(障害者の)性の健康と権利」を掲げる、一般社団法人ホワイトハンズの存在をご存じだろうか。
団体名は英語で「無罪」を意味し、性に関するサービスを(グレーゾーンな事業扱いから)無罪のものに変えてゆくという意思がこめられている。
活動の詳細は、ぜひサイト*を閲覧していただきたい。興味本意で回遊しても考えさせられる事は多いだろう。
*http://www.whitehands.jp/menu.html
宋氏は自身のブログで、乙武氏の行為を手厳しく評している。
「今回のスキャンダルと乙武さんが障害者であることは全く関係ないことだと私は思っています。」
「射精に関して乙武さんは健常人に比べて不便ではあるけれど、それはプロの店を利用すればすむことで、特定の女性とつきあってたことの言い訳としては関係ないと思います。(ちなみに障害者の射精介助をしているNPOもあります)」
ベストセラー作家にして人一倍アグレッシブな行動派である乙武氏と、一般的障害者を同列に並べて語るのは無理があるだろう。
しかし、今回の騒動が禁忌理解への扉を多少なりとも開けたのであれば、本人の意図しない面で副産物を生んだかもしれない。
(文=編集部)