厄介なピロリ菌だが、服薬で除去できる。薬を飲む期間は1週間ほどだが、除去できる人は8割程度だという。とはいえ、除去できなくても、それほど深刻になる必要はない。ピロリ菌に感染している人は、炎症はおきているもののすべての人が潰瘍やがんになるわけではないのだ。
アイスマンも、胃の組織からは、炎症が起きたときにできる複数のタンパク質が見つかり、炎症を起こしていたと推定されるが、胃の中には大量の食べ物が残っており、食欲不振に陥るほどの重症ではなかったようだ。
また、アイスマンから見つかったピロリ菌の全ゲノムが解析され、それによると、現代のインド地域で見られる菌とよく似ているという。現在のヨーロッパ人の胃に棲みついているピロリ菌は、アジアと北アフリカとの混成だが、アイスマンの時代には、アジアタイプだったわけだ。そこで、アフリカ人がヨーロッパへ渡ったのは、アイスマンの時代より後だと推測することができる。ピロリ菌から、人類の歴史もわかってしまうのである。
(文=編集部)