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【シリーズ「血液型による性格診断を信じるバカ」第1回】

日本の常識は世界の非常識!? 血液型と性格の関係を未だに信じるバカがいる! 

 今回は「血液型と性格に相関がある」という説の地域的分布について説明しよう。

 英語版WIKIには<東アジアの日本、韓国その他の諸国には、個人のABO式血液型が性格、気質や他人との協調性を言い当てるという俗信が存在する。世界の他の地域で占星術が占めている役割に似ているが、日本では血液型信仰がもっとつよい>と書かれている。<日本では相手の血液型を尋ねるのが普通で、日本人は外人が自分の血液型を知らないのを聞くとしばしば仰天する>ともある。

 血液型が政治家の言い訳に使われることもある。松本龍復興大臣は岩手と宮城の県知事に暴言を吐いて2011年7月、辞職に追い込まれた。記者会見で「私はちょっとB型で短絡的なところがあって、私の本意が伝わらないという部分があるということは、反省しなければならない」(日本語WIKI[松本龍])と釈明している。こんな言い訳が通用する国は日本だけである。

外国人が自分の血液型を知らないのは当たり前

 日本人ではABO式がほぼ均等に分布しているが、インドには血液型がない人が存在する。南米の原住民にはO型しかない。オーストラリア原住民にはO型とA型しかない。だが性格・気質のない個人はいないし、それが1つか2つしかないという民族も存在しない。

 占星術が個人の行動・性格・行為責任について影響力を持つと信じている文化があったら「呪術に支配された国」と呼ばれるだろう。何でも血液型のせいにする日本は「血液型依存症が支配する国」なのだ。血液型は遺伝子により支配されているが、遺伝子が決めているのは「糖鎖合成酵素」であり、血液型物質そのものは酵素が合成するごく少数の糖だ。しかも脳細胞には型物質がない。

 医学・医療の上で血液型(ABO式だけではない)が重要になるのは、輸血する場合に血液型を合わす必要があるのと犯罪捜査に利用する場合である。しかし輸血する場合には、輸血用血液と輸血される個人の血液の適合性を調べるクロスマッチ試験を必ず行い、完全適合を確認する。だから患者が自分のABO式血液型を知っている必要性はまったくない。外国人が自分の血液型を知らないのは当たり前である。

 米国での調査によると夫婦間の子どもでも15%は親子のABO血液型が合わない。これを「知らぬがほとけ」という。なまじ血液型を知れば不倫騒動になりかねない。日本でもNHKアナウンサーだった森本毅郎が血液型誤判定による同じような家庭内紛争の体験を書いている(「血液型人間学のウソ」、日本実業出版社,1985)。森本のように血液型がAB→Bと変化する人はまれにある。「例外のない法則はない」。

 かくして血液型と性格・気質に関しては、「日本の常識・世界の非常識」になっている。次回は「ケアネット」が紹介した「本当だった!? 血液型による性格の違い」という記事の元となった、弘前大学精神科からの論文について批判的検討を加えよう。

シリーズ「血液型による性格診断を信じるバカ」バックナンバー

難波紘二(なんば・こうじ)

広島大学名誉教授。1941年、広島市生まれ。広島大学医学部大学院博士課程修了。呉共済病院で臨床病理科初代科長として勤務。NIH国際奨学生に選ばれ、米国NIHCancerCenterの病理部に2年間留学し血液病理学を研鑽。広島大学総合科学部教授となり、倫理学、生命倫理学へも研究の幅を広げ、現在、広島大学名誉教授。自宅に「鹿鳴荘病理研究所」を設立。2006年に起こった病気腎移植問題では、容認派として発言し注目される。著書に『歴史のなかの性―性倫理の歴史(改訂版)』(渓水社、1994)、『生と死のおきて 生命倫理の基本問題を考える』(渓水社、2001)、『覚悟としての死生学』(文春新書、2004)、『誰がアレクサンドロスを殺したのか?』(岩波書店、2007)などがある。広島大学総合科学部101冊の本プロジェクト編『大学新入生に薦める101冊の本』(岩波書店、2005)では、編集代表を務めた。

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